「商号」とは、設立する会社の名前のことです。
これには次のようなルールがあります。
(1)商号には、「会社の種類」を入れなければいけない
会社の種類とは、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類のことをさします(今は「有限会社」を新たに設立することはできません)。
この、種類をあらわす文字を入れる場所は、会社の名前の前でも後でも、どちらでもかまいません。
例 田中園芸株式会社 株式会社田中園芸 どちらでもOK。
ただし、これら「会社の種類」をあらわす用語として、外国語表記は登記できません。
たとえば、「Company Limited」「Incorporatad」「Corporation」、またはこれらの短縮形は登記できません。
このような表記を特に公式に用いたい場合には、定款で「当会社は、株式会社田中園芸と称し、英文では、TANAKA Gardening Shop Co.,Ltdと称する」のように併記し、登記上は「株式会社田中園芸」だけとする方法があります。
なお、名前の中に種類を入れなければならないのは、会社以外の「一般社団法人」や「有限責任事業組合」などでも同じです。
(2)登記簿では、商号に使える文字は限定されている
会社がどのような商号を用いるかは、上記(1)の「種類」さえ入れれば、後は自由となっています。
しかし、登記をする際には、使える文字が次のとおりに限定されています。
よって、日本語の句読点は登記では使えませんので、「丸三工業。」は不可です。
「○三工業」もいけませんね。
また、例えばハングル文字などを登記簿にのせることもできません。
(3)近所の会社と勘違いされそうな商号はつけない
以前は、「同一の市区町村内で、同一事業のために他人が登記したものと判別できない商号は登記できない」という「類似商号規制」というものがあり、会社名を決めるのも大変でしたが、今ではこの類似商号規制は廃止されました。
したがって、今では、本店(会社の住所)が同一でない限り、同一市区町村内に同じ商号の会社が並存することができるようになりました。これは会社設立の際に商号を決めるにはありがたいことですが、裏を返せば、隣近所にまったく同じ名前の会社ができる可能性もあるということになります。
これでは、先行して営業している会社はたまったものではありません。
そこで、会社法第8条では、「不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と定め、そのような不正使用を差し止めることができる規定をおくとともに、罰則規定を設けています(第978条第3項)。
つまり、会社法は、「登記するのは自由だけれど、訴えられるかもよ」と言っているわけです。
ですので、少なくとも近所に似たような名前の会社がないかどうか、事前に確認する作業は、やはり今後も必要と考えておくべきでしょう。
(4)不正競争防止法や商標登録に注意
また、「不正競争防止法」という法律によって、
1.他人の商品等表示(商号やブランド、商品名などの商標)として幅広く認識されているものを利用する行為とか、
2.他人の著名性にタダ乗りする行為
このような行為は禁止されています。
つまり、「エル○ス」とか「ミッ○ーマウス」など世に知られた名称を、商号に利用したり商品名やサービス名に利用したりすることは禁止されており、これに違反すると損害賠償や使用差し止めの対象になりかねません。十分注意してください。
作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき