001 商号(会社名)の決め方

「商号」とは、設立する会社の名前のことです。
これには次のようなルールがあります。

 

(1)商号には、「会社の種類」を入れなければいけない

会社の種類とは、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類のことをさします(今は「有限会社」を新たに設立することはできません)。
この、種類をあらわす文字を入れる場所は、会社の名前の前でも後でも、どちらでもかまいません。
      例 田中園芸株式会社 株式会社田中園芸 どちらでもOK。

ただし、これら「会社の種類」をあらわす用語として、外国語表記は登記できません。
たとえば、「Company Limited」「Incorporatad」「Corporation」、またはこれらの短縮形は登記できません。
このような表記を特に公式に用いたい場合には、定款で「当会社は、株式会社田中園芸と称し、英文では、TANAKA Gardening Shop Co.,Ltdと称する」のように併記し、登記上は「株式会社田中園芸」だけとする方法があります。

なお、名前の中に種類を入れなければならないのは、会社以外の「一般社団法人」や「有限責任事業組合」などでも同じです。

 

(2)登記簿では、商号に使える文字は限定されている

会社がどのような商号を用いるかは、上記(1)の「種類」さえ入れれば、後は自由となっています。
しかし、登記をする際には、使える文字が次のとおりに限定されています。

商号で使える文字一覧

よって、日本語の句読点は登記では使えませんので、「丸三工業。」は不可です。
「○三工業」もいけませんね。
また、例えばハングル文字などを登記簿にのせることもできません。

 

(3)近所の会社と勘違いされそうな商号はつけない

以前は、「同一の市区町村内で、同一事業のために他人が登記したものと判別できない商号は登記できない」という「類似商号規制」というものがあり、会社名を決めるのも大変でしたが、今ではこの類似商号規制は廃止されました。

したがって、今では、本店(会社の住所)が同一でない限り、同一市区町村内に同じ商号の会社が並存することができるようになりました。これは会社設立の際に商号を決めるにはありがたいことですが、裏を返せば、隣近所にまったく同じ名前の会社ができる可能性もあるということになります。

これでは、先行して営業している会社はたまったものではありません。

そこで、会社法第8条では、「不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と定め、そのような不正使用を差し止めることができる規定をおくとともに、罰則規定を設けています(第978条第3項)。

つまり、会社法は、「登記するのは自由だけれど、訴えられるかもよ」と言っているわけです。

ですので、少なくとも近所に似たような名前の会社がないかどうか、事前に確認する作業は、やはり今後も必要と考えておくべきでしょう。

(4)不正競争防止法や商標登録に注意

また、「不正競争防止法」という法律によって、
1.他人の商品等表示(商号やブランド、商品名などの商標)として幅広く認識されているものを利用する行為とか、
2.他人の著名性にタダ乗りする行為
このような行為は禁止されています。
つまり、「エル○ス」とか「ミッ○ーマウス」など世に知られた名称を、商号に利用したり商品名やサービス名に利用したりすることは禁止されており、これに違反すると損害賠償や使用差し止めの対象になりかねません。十分注意してください。

 

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき

 

002 本店(会社の住所)の決め方

会社の住所のことを「本店」といいます。
この「本店」は、定款で定め、また登記簿に記載しなければなりません。

本店を置く場所については、日本国内であればどこでもOKです。
自宅を本店にすることも、すでに別の会社があるところに本店をおくことも可能です。

ここで気をつけなければならないことは、
(1)法人住民税の均等割と、
(2)近いうちに自宅・事務所・店舗を移転する予定があるかどうか

です。

 

(1)法人住民税の均等割の問題

会社等の法人を設立すると「法人住民税」がかかります。この法人住民税のうち「均等割」の部分については、たとえ赤字でも払わなければいけません。

ここでポイントは、『 複数の市区町村に事務所等(寮・保養所・集会所なども含みます)があると、市区町村の数だけ法人住民税の均等割が課税される』というところです。
本店はA市に置くけれども店舗はB区に出す、ということをやればA市とB区両方で法人住民税の均等割を納める必要がでてきます。

そのため、事務所・店舗とは別の市区町村に本店をおく場合は、それだけのメリットがあるかどうかをよく検討しましょう。

なお、「本店は登記簿の上だけで、人員も配置しないし事業活動もしません」という場合は、届出(都道府県と市区町村に)をすれば本店所在地では均等割は課税されません。しかし、自宅(本店)の奥様に経理や電話番をさせて給料を支払えば、当然、均等割がかかります。

 

 

(2)近いうちに自宅・事務所・店舗を移転する予定があるかどうか

本店を移転すると「本店移転」の登記が必要となります。これは、登録免許税だけで3万円(法務局の管轄が変わる場合は倍の6万円)かかり、その他に司法書士報酬もかかります。さらに銀行預金など様々なところで変更手続きが必要となりますので、近い将来に本店を移転する予定がある場合には、安易に本店を決めてしまうと後悔することになります。

ところで、新築の店舗を借りて本店にしたくても、会社名義で賃貸借契約をするには、会社を設立してからでないと取得できない登記事項証明書(登記簿謄本)や会社の印鑑証明書が必要ですから、新店舗を本店にできないのではないか?と疑問を持たれるかもしれません。
この場合には、「会社設立後は会社を借主とする特約」がついた(仮)契約を、個人名義で行っておいて、会社設立後に本契約をすれば大丈夫です。

 

 

(3)定款への本店所在地の記載方法

定款では「最小行政区画」まで決めておき、登記簿のほうだけ「所在地」まで記載することも可能です。こうしておけば、同一市内で本店を移転した場合でも、定款を変更しないで登記だけを変更すれば済み、便利です。
定款への本店所在地の記載方法

 

 

 

 

 

 

 

 

※定款に本店を簡略化せずに記載すると、同一市町村内で本店を移転した場合にも定款変更が必要になり、面倒です。

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき

 

 

003 目的(事業目的)の決め方

会社は、定款で定められた事業目的の範囲内でのみ、事業を行うことができます(民法第34条、会社法第3条)。事業目的は登記簿の記載事項でもあります。

事業目的に記載されていない事業は営むことができない、というのが建前です。

しかし、ある会社が事業目的の範囲を逸脱する取引をした後で、その会社の代表取締役が「あれは目的の範囲外の行為だから無効ね」などと取引の無効を主張したならば、取引相手にとってはとんでもない話です。
そのような無効主張が認めれるとしたら、取引のたびに取引相手の登記簿をチェックしなければならなくなってしまいます。

そこで、判例上は、定款に記載された事業目的そのものだけではなく、その事業目的を達成するために必要または有効な行為まで広く含むと、かなりユルやかに解釈しています。

実務的には、事業目的の末尾に「上記各号に付帯する一切の事業」などと記載することで、幅広く取引活動をカバーしています。

とはいえ、事業目的が記載されている登記簿は、金融機関や取引先に提出して内容をチェックされることがあります。
定款・登記簿に記載されている事業目的とまったく関連性のない事業を反復・継続して営んでいると、その事業のために費やした経費が税務署に認めてもらえないなどのリスクもあります。
やはり事業が反復・継続的ならば、定款の事業目的に記載して登記するべきでしょう。

定款への記載の仕方は、主な例をあげると、
「日用品雑貨の製造販売」
「不動産の売買、賃貸およびその仲介」
「飲食店の経営」
「経営コンサルタント業」・・・・・このような感じで記載することが多いです。

電器屋を経営している会社が洋服屋もやりたいと思ったら、たとえば「洋服の販売」のように定款の事業目的を変更・追加するために所定の手続きを取り、さらに登記を申請して登記簿の記載も変更していきます。

 

(1)会社設立時には、将来予定している事業目的を盛り込む

「今すぐには始めないけれども、将来やるかもしれない」事業については、会社設立の時に定款に載せておけば、後で事業目的を追加する手続きをしないで済みます。

その場合に、許認可を必要とする事業であっても、あらかじめ定款に記載しておくことができます。ただし、どのように記載すれば良いか、事前に所轄官庁に問い合わせておくことが大切です。

 

(2)許認可が必要な事業とは

それでは、許認可を必要とする事業には、どのようなものがあるのでしょうか。

許認可を必要とする事業は1000種類以上あると言われており、すべてを網羅することはできませんが、たとえば次のような事業を行う場合には、所轄官庁に対して許認可を取得し、その監督を受けなければなりません。これは一定以上の技術水準や衛生管理水準を必要とする等の理由からです。
許認可を受けずに事業を行うと、営業停止などの処分や罰則が課されることになりますので十分にご注意ください。
mokuteki1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、業種によっては、一定以上の資本金を要求される点についても注意が必要です(特定建設業など)。

 

 

(3)事業目的を多くしすぎない

事業目的をあまりに多く記載するのも考えものです。「いったいこの会社は何をしている会社なのか?」ということが不明確になりすぎると、許認可審査や金融機関の融資審査を受ける際に大きなマイナスですし、また新しく取引をはじめる取引先からも不審に思われるかもしれません。
ほどほどにしておきましょう。

 

(4)その他、事業目的に記載できないもの

事業目的は登記簿に記載され公にされるものですから、一定の制限があり、次の要件を満たさないと登記できません。

登記できない事業目的

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前はこの他に「具体性」という要件もあり、目的を決めるのが煩雑でしたが、会社法施行後はこの要件がなくなりました(そのため、極端な話「商業」という事業目的でも受理されます)。
けれども、取引相手や金融機関、許認可を受ける際などにマイナスの印象を与えないよう、ある程度具体的な事業目的を定めることも大切です。

 

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき

 

007 役員の任期を何年にするか

一般的な中小株式会社では、役員の任期は最長10年

ここでは、役員の任期に限って話を進めます。

『株式会社』の場合、役員には任期があり、定期的に改選してその都度登記をしなければなりません。
ちなみに、株式会社以外の会社形態では、役員に任期はありません。

株式会社の役員任期は、一般的な「1期=1年」の会社では、原則は下図のとおりです。
株式会社の役員任期

 

このように覚えていただければ、ほぼ間違いありません。
(法律上の言い回しがわかりにくいので、言い換えてあります。法律上正しい表現は、『選任後・・年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで』となっています。)

ただし、重要な例外があります。

会社が発行する全部の株式に『譲渡制限(これが何かということは別の機会に)』がある場合、定款に定めをおくことによって取締役も監査役も任期を『10期め終了直後の決算総会終了時』まで伸ばすことができる、という例外です。

中小企業の定款には、通常はこの『株式譲渡制限の定め』があり登記もされていますから、ほとんどの会社がこちらの例外を採用して、役員の任期を延ばしました。
これが、「会社法が施行されて役員の任期が10年になった」と言われているものです。

役員の任期は10年でいいのか?

多くの会社が定款変更をし、新設株式会社の役員任期については最長の『10年』と定めるケースが多くなりました。
以前は2年ごとに役員変更登記(全員再選でも必要)の登記をしなければならなかったものが最大で10年やらなくて済むということで、費用も手間も節減できるためです。

ただ、10年という期間が役員の任期として妥当かどうかということは、会社の株主構成や役員の構成員によって判断したほうが良い場合があります。

役員の任期というのは、例えれば野球選手などの複数年契約に似ています。
野球選手の場合は雇用契約なので年俸を勝手に下げることができず、会社役員の場合は委任契約なので報酬を上下できるという違いはありますが、何が似ているかといえば、正当な理由がない限り辞めさせる場合には違約金が発生する、という点です。
違約金は通常、任期の残りの期間分の役員報酬が、算定基準となります。
役員任期を10年にするということは、10年間役員として迎えることを約束するのと同じことなのです。特に問題を起こしたわけでもないのに何らかの事情で解任するようなことになれば、任期の残り期間については会社は役員報酬相当額を違約金として支払わなければなりません。

さて、10年という期間は、かなり長いです。経営には「おカネ」の話がついてまわりますので、家族・親族であっても将来の関係がどうなるかは誰にもわかりません。他人であればなおのことです。
そのため、役員が一人とか家族ならばともかく、知人友人などに役員への就任を依頼する場合には、親しい仲であるからこそ、役員任期は長くても5年程度に収めておくべきではないかと私たちは考えています。

なお、任期を長くすると、いざ任期が満了した時には忘れてしまっている危険性があります。
任期の到来を忘れたままにしておくと、「過料」という反則金がかかります
また、何も登記をしないまま12年以上放置すると、実質的に活動していないとみなされて強制的に解散させられる可能性もあります。
でも、ご安心ください。
司法書士法人ひびきをご利用いただいているお客様には、必ず次回の任期到来時に、私たちからご連絡させていただきますので!

作成:八潮三郷の司法書士法人ひびき

008 役員(1) 株式会社の『機関』『役員』とは

株式会社の役員は、現在は1名でもよくなりました。この場合はあまり悩むことはありません(でもここで、「本当に1人でいいのか?」という問題があります。この点は後で触れます)。
しかし、役員を何人か置くならば、誰をどのような役員にするのか、どのような機関を置くのかを考えなければなりません。

役員というのは、『代表取締役』『取締役』『監査役』などのことです。
機関と言うのは、『株主総会』『取締役会』などのことです。

複数の役員を置く場合には、株主構成や税金対策、はたまた事業承継対策などを考慮して、どのような機関や役員を設けるべきなのか、またその場合に注意すべき点は何なのかをよく検証してみるべきです。ここは、後悔しないように会社設立時にじっくり考えておくべき事柄です。

まず、株式会社の役員や機関にはどのようなものがあるか、という点から見ていきましょう。

株主総会

 

取締役1取締役2取締役会代表取締役監査役1監査役2
会計参与

 

上記のうち株式会社で最低限必要なのは、最高意思決定機関としての株主総会と業務執行を担当する取締役1名だけですから、これで株式会社を設立することは可能です。

 

とはいえ、すべての株式会社が『株主総会+取締役1名』で間に合うわけではありません。取締役会を置くべきケース、監査役を設置したほうがよいケースもあります。今後そのあたりを記事にしたいと思います。

 

作成:八潮・三郷の司法書士法人ひびき

009 役員(2) 株式の譲渡を制限するかどうかで、必要な役員・機関は変わる

取締役会や監査役を置くケースは少なくなった

さて、008で、会社に置くことのできる『役員』『機関』には、どのようなものがあるのかをご紹介しました。
そして、最低限「株主総会+取締役1名以上」で会社が作れる、ということも説明しました。

平成18年の会社法施行以来、株式会社を設立する際には、このような『最小構成』で設立するケースが大半を占めています。「取締役会」とか「監査役」などを置くケースは、今では少ないです。

ほとんどの会社が「株主=経営者」なので、株主総会とは別にわざわざ取締役会を設ける実益は少ないですし、監査役を置く意味もあまりないからでしょう。株主が経営に直接関与しないような場合や、親会社が子会社を設立するような場合には、あえて取締役会や監査役を置くこともありますが、全体から見れば少数です。

(ちなみに、以前は、株式会社では「株主総会」「取締役3名以上」「取締役会」「監査役1名以上」が必須とされていました)

 

「取締役会」や「監査役」を“置かなければいけない”場合とは

このように「取締役会」や「監査役」を置かなくても良いことにするためには、実はある条件があります。

その条件とは、株式に譲渡制限という決まりがついている、ということです。逆に言えば、株式に譲渡制限という決まりがついていない場合には、「取締役会」と「監査役」を“置かなければいけない”ことになっています。

株式の譲渡制限とは、たとえば「当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を要する」というような規定を、定款に記載します。 譲渡制限の内容は登記簿にも記載する必要があります(株券を発行したら、株券にも記載)。

 

では、どうして、『株式の譲渡制限』があるかどうかによって、会社の役員構成や設置機関が変わるのでしょうか?

 

本来、株式会社の株式は、他人に自由に売却して、投資した資金を回収することができるものです。たとえば、上場しているような大会社では、株式市場で自由に株式を売買できるようになっていますね。

しかし、日本の株式会社の99%を占める中小会社で、株主が自由にその株式を売買できるとしたら、ちょっと困ったことになります。

株式を持つということは、ある会社に対して様々な権利を持つ(カネも出すけど口も出す)ということで、一定数の株式を保有すれば実質的にその会社を支配することすら可能になるという、強力なものです。中小会社では株主数が10名以下であることが多いですから、その会社の株式を自由に他人に譲渡できるとなれば、「目が覚めたら会社が人手に渡っていた」というように、経営者や他の株主に多大な影響を及ぼしかねません。

そこで、会社が知らないうちに株主が変わらないように、株式の譲渡にシバリをかける制度があります。それが『株式の譲渡制限』なのです(この制度自体は50年くらい前からありました)。

なお、譲渡制限規定の内容は、株式の譲渡について誰か(株主総会、代表取締役等)の承認を要するというものに限られ、株式の譲渡を「禁止」するような定めを設けることはできないことになっています。

 

平成18年に施行された会社法を作った人たちは、この『株式の譲渡制限』に着目しました。
と言うのも、それまでは株主が数千人いるような超大会社でも、株主が一人しかいない町の小会社でも、同じ「株式会社」である以上、法律上は大きな違いを出すことができず、さまざまな点で実態と法律とが合わなくなってきていたのです。

「株式譲渡にシバリのある会社は、ほとんど中小企業に違いない。」
「株式を自由に譲渡して良い会社は、そこそこ大きな会社かこれから大きくなる予定の会社に違いない。」
「だったら、同じ株式会社でも、譲渡制限があるかないかで会社の仕組みをガラリと変えてしまってもいいんじゃないか?」
・・・と、このように考えたのですね、たぶん。

こうして、『株式の譲渡制限』がある会社は取締役会や監査役を置かなくても良いことになりました。反対に『株式の譲渡制限』がない会社は、昔のままに取締役会や監査役を置くことが義務付けられています。

 

『公開会社』と『非公開会社』の違い

専門用語なので覚える必要はまったくありませんが、平成18年の会社法施行後は、株式の譲渡制限規定の有無によって会社のタイプが異なるようになったため、一応、それぞれに名前が付いています。

  • 定款上、全ての株式に譲渡制限がついている会社は、非公開会社
  • それ以外の会社は、公開会社

現在のジャスダック証券市場に上場している株式のことを、昔は「店頭公開株」と呼んでいましたが、それとは何の関係もありません。単に、株式の譲渡制限規定が定款にあるかないかによる区別です。

そして、株式の譲渡制限規定の有無によるこの区別方法は、法律を作る側にとって非常に便利な区分であったため、これ以外にもさまざまな点で差を設けられています。
「今は小さくても将来は会社規模を大きくしたい」というような場合には、少なくとも下記の違いはご理解ください。
公開会社と非公開会社の違い

 

このように、非公開会社のほうが、公開会社よりもずっと自由度が高い内容になっています。
一般的な株式会社設立の場合は、株式に譲渡制限をつけて非公開会社としますので、この点であまり悩む必要はありません。

「株式の譲渡制限」は、非常に奥深い世界なのですが、会社設立時はこの程度の理解で十分です。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂          お問い合わせはこちら
厂               無断転載禁止

 

010 町名地番変更の不動産登記(会社所有の不動産の場合)

区画整理で会社の本店所在地や支店所在地が変わると、次の登記手続きを行う必要があります。

(1)会社登記簿の本店所在地変更登記・支店所在地変更登記
(2)不動産登記簿の登記名義人変更登記

会社所有の不動産がある場合、必ず(1)の手続きを先に済ませ、それから(2)の手続きに進みます。

ここでは、(2)について解説します。

 

区画整理で本店(会社の住所)の表記が変わる

現在、八潮駅近辺では区画整理が進んでいます。このうちUR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が整備しているエリアは、比較的近い時期に町の名称や地番が変更され、該当エリアに登記簿上の本店・支店を有する会社・法人についても所在地表記が変更されます。
町名地番変更のイメージ

町名地番変更があった場合、まず会社・法人の登記簿に記載された本店所在地・支店所在地を変更し、さらに不動産を所有している場合には、不動産登記簿に記載された本店の表示を変更する必要があります。

 

不動産登記簿に記載されている「本店」は、申請しないと変更されない!

土地や建物・マンション等の不動産を会社・法人で所有(または共有)している場合、その不動産登記簿に「本店所在地(住所)」と「商号(名称)」が記載されています。

町名地番変更が実施されて本店所在地が変わった場合、不動産登記簿に記載されている名義人の本店所在地は、自動的に変更されません
市外の不動産はもちろん、市内の不動産でも、自動的に変更されません。

不動産登記簿上の本店所在地を、町名地番変更後の新しい本店所在地に変更するには、名義人である会社・法人から管轄法務局に、本店変更の登記(登記名義人本店変更登記)を申請する必要があります。

 

住所変更の登記を申請する期間

いつから?

町名地番変更が実施されても、会社法人所有の不動産について、すぐに本店変更の登記を申請することはできません。なぜかと言えば、管轄法務局で不動産登記簿自体の町名地番変更の作業を行うため、 しばらくの間、登記簿が閉鎖されるからです。

不動産登記簿の閉鎖期間は2~3ヶ月に及びます。本店変更の登記を申請することができるのはその後になりますので、この間に会社・法人登記簿の本店所在地変更登記・支店所在地変更登記を、先に済ませておくとよいでしょう。

いつまでに?

会社法人登記簿と異なり、不動産登記簿上の本店変更登記には、期限は特にありません。
そのため、売買や贈与などの所有権の移転や、抵当権の設定や抹消などの際に同時に申請すれば問題ありません。

 

用意する書類は?

不動産登記の申請書に、「履歴事項証明書」(会社の登記簿謄本)を添付して申請します。

この履歴事項証明書は、必ず、会社の本店所在地を変更した後のものでなければなりません。
(なお、不動産を管轄する法務局に本店の登記がある場合は履歴事項証明書が不要になります。)

 

 

費用は?

登記申請の際にかかる登録免許税は、原則として免除されます。

司法書士に依頼した場合には、報酬がかかります。

 

厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂厂
厂厂厂厂
厂厂厂  ©司法書士法人ひびき@埼玉八潮三郷
厂厂          お問い合わせはこちら
厂               無断転載禁止

 

011 2015年2月27日、役員変更登記の本人確認が厳格になります

2015年2月27日から、会社登記・法人登記に関する規則が改正され、役員変更等の登記を申請する場合の添付書類が変更されます(設立登記においても影響がある場合があります)。

また、登記簿に役員の方を登記する際、旧姓を併記できるようになります。

 

(1)役員の就任登記で、住民票や免許証の写し等、本人確認証明書の添付が義務化。

会社・法人等で役員が新たに就任する場合には、従来は、特定の役員だけ印鑑証明書の添付を求められていました(会社の形態による)。

しかし、本人確認が厳格になり、今までは印鑑証明書の添付を要しなかった役員(監査役等)が新たに就任する場合に、下記の本人確認証明書を添付しなければならなくなります。

【本人確認証明書の例】
・住民票記載事項証明書(住民票の写し)
・戸籍の附票
・住基カード(住所が記載されているもの)のコピー ※
・運転免許証等のコピー ※
(※ 裏面もコピーし,本人が「原本と相違がない。」と記載して,記名押印する必要があります。)

(注1)株式会社のみならず、有限会社・持分会社・各種法人についても同様です。
(注2)再任・重任の場合は不要。新任の場合だけです。
(注3)印鑑証明書を添付すべき役員については、上記の本人確認証明書は不要です。
(たとえば取締役会非設置会社の取締役)
(注4)『設立登記』も同様です。

 

(2)会社実印を法務局に届け出た役員が中途辞任する場合、辞任届に届出印を押印。

代表取締役等が辞任する場合でも、従来は三文判による辞任届でも通用しました。
これが、会社実印を法務局に届け出ている役員に限り、次のとおり変更されます。

【原則】辞任届に会社実印を捺印する。
【例外】辞任届に個人の実印を押印し、個人の印鑑証明書を添付する。

(注1)株式会社のみならず、有限会社・持分会社・各種法人についても同様です。
(注2)任期満了等の場合は不要。辞任の場合だけです。

 

(3)役員登記で、旧姓の併記が可能に。

役員が婚姻して姓が変わった場合、申出によって旧姓を併記できることとなりました。
設立や就任によって、新たに登記簿に氏名が載る場合も同様です。
旧姓を併記する場合には、婚姻前の氏を証する戸籍謄本等が必要です。

(注1)旧姓を併記しないならば、従来通り、添付書面は必要ありません。
(注2)申出ができるのは、登記申請時に限ります。ただし、本年8月27日までの間に限り、すでに登記されている役員でも、申出によって旧姓を併記できます。
(注3)併記できるのは、「婚姻」による氏の変更に限ります。