331 デット・エクイティ・スワップ(DES)とは

現物出資の形態のひとつで、会社を債務者とした金銭債権(会社に対する貸付金など)を、債権者(社長・役員・親会社など)が、債務者である株式会社に現物出資してその株式を取得し、結果として実際のお金の動きが全くないまま会社の債務(debt)が資本(equity)へと振り替えられる(swap)ことをいいます。

図でイメージすると、次のようになります。

des

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デット・エクイティ・スワップ(DES)には、次のようなメリットがあります。

(1)会社の財務体質の健全化

債務者である会社にとっては、過剰債務を減らし、財務体質を健全化できるメリットがあります。
有利子負債の減少により金利負担が軽くなり、会社再建を図ることができます。

 

(2)債権者による経営関与の強化

会社の債権者にとっては、単なる債権放棄ではなく不良債権を株式化することで、債務者である会社に対し経営に関与し、モラルハザードを防止することができます。また、会社の再建が成功すれば、株式の価値が上昇しキャピタルゲインを得られる可能性もあります。

 

(3)相続税対策にもなる

オーナー会社では、社長が会社に対して貸付金を有するケースが多々あります。
社長が会社に対し債権を5000万持っているとすると、社長に万一のことがあれば、たとえ回収可能性が低くても貸付金は相続税の評価上では額面で評価されますので、5000万の財産として相続税評価されてしまいます。

しかし、DESによってこの債権を株式化しておけば、相続税評価としては株式として取り扱われるため、通常は評価額が下がり、結果として相続税を下げる効果があります。

もちろん相続財産の評価を下げるためだけにDESを行えば租税回避行為として否認されるおそれがありますが、通常は会社再建のためやむを得ず行われることが多いため、あまり問題になることはありません。
なお、デット・エクイティ・スワップ(DES)も現物出資の形態の一つである以上、裁判所が選任した検査役の調査や弁護士・会計士・税理士の証明が必要となるのが原則ですが、出資する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る)の評価額が、帳簿価額に記載されている価額を超えない場合は、検査役による調査も弁護士などの調査も必要ないとされています(会社法207条9項5号)。

そのため、実務上では、ほとんどのデット・エクイティ・スワップが、検査役の調査や弁護士などによる証明を必要としません。

 

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき