会社は、定款で定められた事業目的の範囲内でのみ、事業を行うことができます(民法第34条、会社法第3条)。事業目的は登記簿の記載事項でもあります。
事業目的に記載されていない事業は営むことができない、というのが建前です。
しかし、ある会社が事業目的の範囲を逸脱する取引をした後で、その会社の代表取締役が「あれは目的の範囲外の行為だから無効ね」などと取引の無効を主張したならば、取引相手にとってはとんでもない話です。
そのような無効主張が認めれるとしたら、取引のたびに取引相手の登記簿をチェックしなければならなくなってしまいます。
そこで、判例上は、定款に記載された事業目的そのものだけではなく、その事業目的を達成するために必要または有効な行為まで広く含むと、かなりユルやかに解釈しています。
実務的には、事業目的の末尾に「上記各号に付帯する一切の事業」などと記載することで、幅広く取引活動をカバーしています。
とはいえ、事業目的が記載されている登記簿は、金融機関や取引先に提出して内容をチェックされることがあります。
定款・登記簿に記載されている事業目的とまったく関連性のない事業を反復・継続して営んでいると、その事業のために費やした経費が税務署に認めてもらえないなどのリスクもあります。
やはり事業が反復・継続的ならば、定款の事業目的に記載して登記するべきでしょう。
定款への記載の仕方は、主な例をあげると、
「日用品雑貨の製造販売」
「不動産の売買、賃貸およびその仲介」
「飲食店の経営」
「経営コンサルタント業」・・・・・このような感じで記載することが多いです。
電器屋を経営している会社が洋服屋もやりたいと思ったら、たとえば「洋服の販売」のように定款の事業目的を変更・追加するために所定の手続きを取り、さらに登記を申請して登記簿の記載も変更していきます。
(1)会社設立時には、将来予定している事業目的を盛り込む
「今すぐには始めないけれども、将来やるかもしれない」事業については、会社設立の時に定款に載せておけば、後で事業目的を追加する手続きをしないで済みます。
その場合に、許認可を必要とする事業であっても、あらかじめ定款に記載しておくことができます。ただし、どのように記載すれば良いか、事前に所轄官庁に問い合わせておくことが大切です。
(2)許認可が必要な事業とは
それでは、許認可を必要とする事業には、どのようなものがあるのでしょうか。
許認可を必要とする事業は1000種類以上あると言われており、すべてを網羅することはできませんが、たとえば次のような事業を行う場合には、所轄官庁に対して許認可を取得し、その監督を受けなければなりません。これは一定以上の技術水準や衛生管理水準を必要とする等の理由からです。
許認可を受けずに事業を行うと、営業停止などの処分や罰則が課されることになりますので十分にご注意ください。
なお、業種によっては、一定以上の資本金を要求される点についても注意が必要です(特定建設業など)。
(3)事業目的を多くしすぎない
事業目的をあまりに多く記載するのも考えものです。「いったいこの会社は何をしている会社なのか?」ということが不明確になりすぎると、許認可審査や金融機関の融資審査を受ける際に大きなマイナスですし、また新しく取引をはじめる取引先からも不審に思われるかもしれません。
ほどほどにしておきましょう。
(4)その他、事業目的に記載できないもの
事業目的は登記簿に記載され公にされるものですから、一定の制限があり、次の要件を満たさないと登記できません。
以前はこの他に「具体性」という要件もあり、目的を決めるのが煩雑でしたが、会社法施行後はこの要件がなくなりました(そのため、極端な話「商業」という事業目的でも受理されます)。
けれども、取引相手や金融機関、許認可を受ける際などにマイナスの印象を与えないよう、ある程度具体的な事業目的を定めることも大切です。
作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき