005 会社設立時の出資者と出資方法を決める

(1)会社で一番エラいのは?

会社を設立するには、まず『発起人』が定款をつくることが必要です。
裏返して言えば、定款をつくる人のことを『発起人』といいます。
現在は『発起人』は1人でもかまいません。また、同種の事業目的があれば、会社もまた他の会社の発起人となることができます。

株式会社の場合、定款を作るだけでは会社は設立できません。
誰かが出資をして、会社の基本財産を用意しなければならないのです。

発起人だけが出資をする方法を『発起設立』といいます。
これに対して、発起人のほかに出資者を募る方法があり、これを『募集設立』といいますが、手続きが複雑で今ではあまりメリットもないので、ここでは省略して『発起設立』に限って説明します。

会社は、出資者が会社に対して出資をし、その見返りとして会社が出資者に配当(利益還元)をする、というのがタテマエになっています。
この出資者のことを株式会社の場合『株主』といいます。発起人は出資者ですから、会社設立後はそのまま『株主』になるわけです。

発起設立とは募集設立

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

法律上、会社の中で一番エライのは、社長でも会長でもなく、「株主様」ということになっています。
たとえば、会社の役員は株主総会で選びますし、解任もできるという具合です。

カネも出すけど口も出す、という存在が「株主様」なのです。

しかも、会社の世界では、持っている株式の数で会社に対する発言権が決まるのです。
上の『発起設立』の図で、発起人Bは発起人Aより倍の金額を出資していますから、所有株数もAの倍となり、会社に対する発言権も倍あると考えて良いのです。しかもBは全体の50%(資本金総額200万のうち100万)を出資していますので、たとえAが代表取締役社長であったとしてもこの会社を実質的に支配しているのはBということになります。

ですから、会社経営に口を出してほしくない人には出資ではなく借入金として事業資金を出してもらうほうが安全です(完全無議決権株式というものもありますが、複雑です)。ただし、借入れにする場合は、税務署から贈与と判定されないように注意が必要です(特に身内から借り入れる場合)。

 

(2)ワンマン路線か、チームワーク重視か

このように出資者(株主)を誰にするかは、後々の経営に重大な影響を及ぼしますし、またある意味では会社のカラーを決定づける大きな要素にもなります。

たとえば、個人事業主であるあなたが資本金300万円の会社を設立して法人成りするとします。
この場合、
A)あなたが300万円全部出資する
B)あなたと従業員2人、計3人が100万円ずつ出資する
どちらを取るかで会社のカラーはまったく違ってくるはずです。

A)の場合、会社に対する発言権はあなたにしかありませんから、あなたの強力なリーダーシップを発揮できることでしょう。一方、従業員のモチベーションは上がらないかもしれません。まさにワンマン経営です。

B)の場合、誰も株式数が過半数を超えていませんので、何を決めるのも多数決で決めていくことになります。けれども株主になれば、業績が上がれば配当を受け取る権利がありますので、積極的に仕事に励んでくれるかもしれません。こちらはチームワーク重視の経営スタイルです。
しかし、関係がこじれると、ちょっと厄介です。

会社の経営スタイルは色々ですので、正解はありません。どのような経営スタイルを目指すのかによって答えは違ったものになります。

 

(3)現物出資~出資財産は現金に限らない~

会社を設立するときの出資財産は、不動産や自動車・パソコンなどの動産、株式などの有価証券、貸付金や売掛金などの債権など、評価可能な財産であれば現金でなくてもかまいません。現金出資なしで、すべて現物出資により会社を設立することも可能です。
ただし、現物出資をする場合には、定款に記載しなければ効力を生じませんので、注意が必要です。
現物出資

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現物出資する財産は、評価して金額に換算する必要があります。
そこで、本来は裁判所に「検査役」の選任を申し立てて、選任された検査役(公認会計士や弁護士)が財産評価を行うのですが、
1)ものすごく時間がかかる
2)ものすごく費用がかかる
ので、まったく非現実的です。

そこで、現物出資であっても検査役を選任しなくても良いものとされている法律上の例外があるので、通常はこちらを選択することになります。
検査役の調査が不要な現物出資

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、500万円以下の現物出資であればご自由にどうぞ、ということです。
現物出資財産をどのように評価するかは、発起人に任されてしまいます。

ここで、もしも定款に記載した現物出資財産の評価額が現実の価格より低かったとしたら、どうなるでしょう?
たとえば、Aさんが現金で50万円、Bさんが50万円と評価した自動車を出資して、資本金100万円の会社を設立したが、実はBさんが出資した自動車が事故車で本当は10万円の価値しかなかったような場合です。設立時取締役にはAさん、BさんのほかにCさんがいるとします。
資本金に、40万円も穴があいてしまってますね。
このような場合、原則として、発起人と設立時取締役の全員が連帯して(つまりBさんだけでなく、AさんもCさんも連帯して)不足分40万円を穴埋めする責任を負います。

 

(4)名義変更は会社設立後に行う

不動産や自動車、株式(上場株式)などを現物出資した場合には、登記・登録などの名義変更をすることになります。しかし、会社設立登記が終わらないと会社の登記事項証明書(登記簿謄本)が取得できないため、それまでは現実的には名義変更の手続きができません。
これらの名義変更手続きは、会社設立後すみやかに行うことになります。

作成:八潮三郷の司法書士法人ひびき