債権回収は時効に注意
債権には時効(消滅時効)があります。
権利を行使せずに放置していると、一定期間が経過することによって権利が消滅してしまうおそれがあります。
たとえば商品の売掛金は2年、企業間の取引では5年、一般の債権は10年で時効にかかります。
ただし、期間が経過すると必ず権利が消滅するわけではありません。
相手方が時効を主張して初めて請求ができなくなるだけで、相手方が時効を主張(援用といいいます)しなければいつまでも請求できるというものです。
また、『時効の中断』という制度があり、時効が完成する前に請求を行った上で訴訟を提起したり、相手方が債務を承認したりすれば時効の進行を振り出しに戻すことができます。
いずれにしても、債権回収をする際には時効に注意して必要に応じて時効中断をし、期間が経過している場合には時効を援用されないよう慎重に事を運ばなければなりません。
1.まず電話や面談で催促してみる
売掛金などの債権回収をするために、まず思い浮かぶのは訴訟や強制執行です。
確かにそれらも債権回収の手段ではありますが、まずその前に電話や面談で相手方と直接交渉し、支払いを促すことが大切です。
債権を早く回収したいからといって、いきなり法的手段を利用して相手方に心理的圧迫を加える方法をとることは、かえって逆効果になりかねません。
債権回収においては、まず電話で相手に支払いの意思があるかどうかを確認し、”穏便に”支払いに応じるように交渉してみます。
威丈高になってはいけません。
「相手にも事情があるのだろう」と、心遣いを見せるくらいの余裕をもって交渉します。
電話や面談で交渉して解決できれば、費用をほとんどけることなく、早期に問題を解決することができます。
相手が交渉に応じて支払うことを約束したら、トラブルを防ぐためにもその内容を『債務承認契約書』『借用書』などの書面できっちり残します。
できれば担保や保証人をつけられるとより確実です。
2.公正証書で支払いを確実にする
公正証書とは、法律の専門家である公証人が、法律に従って作成する公文書のことです。
公文書なので高い証明力をもつばかりでなく、支払いを履行できなければ強制執行に服するという内容(執行認諾約款)が盛り込まれ、支払いがなければ裁判所の判決がなくても強制執行をすることができます。
(ただし、金銭や有価証券等の支払い”以外”が目的の公正証書では、強制執行を行うことはできません。)
相手方が支払いを約束したが、本当に支払ってもらえるのか不安な場合、ひとつの手段として公正証書の作成を検討します。
ただし契約書なので、相手方が作成に同意し、印鑑証明書などの必要資料を提供してくれなければ利用できません。
また、公証役場に下書きの作成を依頼したけれども結局相手方が公正証書の作成に応じなかった場合、キャンセル料が発生します。
3.内容証明郵便を出す
電話や面談で直接交渉を行っても支払いがない、あるいはそもそも相手に支払いの意思がない場合には、『配達証明付き内容証明郵便』を利用します。。
『配達証明付き内容証明郵便』とは、普通の手紙などと同じ郵便ですが、通常の郵便と異なり『誰に』『どのような内容で』郵便を出したのか、郵便局長が証明してくれ、配達したならば相手が受け取ったことを証明したハガキを差出人に送り返してるというものです。
配達証明付き内容証明郵便を送るだけでは特に法律的な効果は生じませんが、訴訟になった場合には、相手方に支払いを請求したという事実を確実に証明することができます。
内容証明郵便はいわば『宣戦布告』ですので、受け取った相手側は、相当な心理的圧力を受けます。
そのため、送付する際には内容やタイミングを十分に吟味し、かえって相手方を開き直らせることがないように注意します。
4.支払督促の仕組みを利用する
内容証明を送っても相手方が支払いに応じない場合は、すみやかに裁判所を利用して法的手段に出て、積極的に支払いを求めることも重要です。
その方法の一つが『支払督促』です。
支払督促とは、裁判所が相手方に対して支払いを命令してくれる制度です。
申立ては相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に対して行い、申立てにあたって証拠を出す必要もありません。
裁判所から通知が行きますので、内容証明よりもさらに強いプレッシャーを加えられるほか、相手方から異議がなければ勝訴判決を得たのと同じ意味を持ち、ただちに強制執行することができます。
相手方が訴訟までする意思がない場合には、大変有効です。
ただし、相手方から異議が申し立てられると通常訴訟に移行し、裁判に時間を要することになるというデメリットもあります。
しかし、そうなった場合でも、相手方が法廷に現れて和解が成立することも少なくありません。
5.民事調停を検討する
民事調停とは、簡易裁判所で裁判官・民間の調停委員をまじえて当事者が話し合いを行うものです。
調停は非公開で、また、裁判所が一方的に結論を出してそれを当事者に強制することはありません。
民事調停では当事者でお互いに譲り合い、実情に即した和解を図ることがポイントになります。
調停は話し合いで解決を図るものなので、次のように話し合いの余地がなければ適しません。
・相手方にも一理あると認められる場合
・相手方と今後も良好な関係を維持していきたい場合
・裁判費用が高いと感じる場合(裁判所に納める印紙は裁判の約半分)
調停が成立した場合、内容は調停調書にまとめられます。
調停調書は確定判決と同じ効力を持ち、内容が守られなかった場合には強制執行をすることができます。
デメリットとしては、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所で話し合われる点と、あくまでも話し合いであるため、和解が整わなければ通常訴訟に移行するという点が挙げられます。
6.少額訴訟を提起する
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを請求する場合に利用できる、簡易裁判所で行われる訴訟です。
通常訴訟と異なり、少額訴訟ならば1日で審理が終わり、早く判決を得ることができます。
もちろん判決内容が守られなかった場合は強制執行もできます。
ただし1日で審理が終わるため、書面による証拠が不可欠で、証拠が整っていなければ少額訴訟を利用することができません。また一か所の裁判所で利用できるのは年10回までです。
なお、判決に不服がある場合には、通常訴訟によって審理をすることになります。
7.相殺という手法もある
このように金銭債権のような同じ種類の債権を自分と相手方がお互いに持っている場合に、債権と債務を差し引いて消滅させることを「相殺(そうさい)」といいます。
ただし、こちらの債権のほうはすでに支払期日が到来していなければ、相殺することができません。支払期日が来ていなければ、相手方はまだ支払う義務がないからです。
なお、相殺は相手方への一方的な意思表示で成立しますが、相殺することを配達証明付き内容証明で通知して証拠を残しておくことがポイントです。
8.話し合いが成立したら、即決和解を申し立てる
当事者間であらかじめ和解が成立している場合に、簡易裁判所に対して和解の申し立てをすることを『即決和解』と言います。
具体的には、当事者が裁判所におもむき(もちろん代理人でも可)、和解した内容に基づいて裁判所のお墨付きのある和解調書を作成してもらうというものです。
もちろんこの和解調書には判決と同程度の効力があります。
和解した内容に当事者同士が納得している場合で、和解内容が履行されるか不安がある場合には、この即決和解を利用することでお互いに時間的・金銭的コストを軽減することができます。
9.債権譲渡で少しでも回収を図る
債権譲渡とは、自分が相手方に対して持っている債権を第三者に安く譲り渡すことです。
直接的ではありませんが、回収困難な債権を間接的に回収することができます。
この方法では全額を回収することはできませんが、もともと回収が困難な債権なので多少割り引いても一部だけ回収できれば良し、と割り切れる場合には検討の余地があります。
なお、債権に譲渡禁止特約がある場合には利用できません。
10.通常訴訟は最後の手段
相手方がどうしても支払いに応じない場合、最終的には通常訴訟によって回収を図ることになります。
裁判によって勝訴すれば強制執行となりますが、相手方がすでに支払能力を失っているような場合には強制執行しても回収できる可能性は低く、費用倒れになる可能性が高くなります。
また、相手方に支払能力があっても、売掛金などの存在をきちんと立証できて勝訴を得られる可能性があるか、あるいはそれまでの経緯から和解に持ち込める見込みがあるか、見極めが大切です。
司法書士法人ひびきの報酬について
債権回収について、司法書士法人ひびきの報酬は、下記のとおりです。
どの回収方法を採っていくかは、司法書士法人ひびきにお任せいただきます。
1)着手金 0円
2)成功報酬 回収額の22%(ただし最低110,000円、消費税込み)
3)実費 別途
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あくまでも回収が目的で、書類を作成することが目的ではありませんので、着手金0円とし、成功報酬のみを申し受けます。
リスクを当事務所で負うことになりますので、お引き受けしない場合もございます。
なお、司法書士は訴額140万円以下の案件でなければ代理交渉・訴訟ができませんが、これを上回る場合でも支払督促や民事調停に関する書類作成の形でサポートいたします。