007 役員の任期を何年にするか

一般的な中小株式会社では、役員の任期は最長10年

ここでは、役員の任期に限って話を進めます。

『株式会社』の場合、役員には任期があり、定期的に改選してその都度登記をしなければなりません。
ちなみに、株式会社以外の会社形態では、役員に任期はありません。

株式会社の役員任期は、一般的な「1期=1年」の会社では、原則は下図のとおりです。
株式会社の役員任期

 

このように覚えていただければ、ほぼ間違いありません。
(法律上の言い回しがわかりにくいので、言い換えてあります。法律上正しい表現は、『選任後・・年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで』となっています。)

ただし、重要な例外があります。

会社が発行する全部の株式に『譲渡制限(これが何かということは別の機会に)』がある場合、定款に定めをおくことによって取締役も監査役も任期を『10期め終了直後の決算総会終了時』まで伸ばすことができる、という例外です。

中小企業の定款には、通常はこの『株式譲渡制限の定め』があり登記もされていますから、ほとんどの会社がこちらの例外を採用して、役員の任期を延ばしました。
これが、「会社法が施行されて役員の任期が10年になった」と言われているものです。

役員の任期は10年でいいのか?

多くの会社が定款変更をし、新設株式会社の役員任期については最長の『10年』と定めるケースが多くなりました。
以前は2年ごとに役員変更登記(全員再選でも必要)の登記をしなければならなかったものが最大で10年やらなくて済むということで、費用も手間も節減できるためです。

ただ、10年という期間が役員の任期として妥当かどうかということは、会社の株主構成や役員の構成員によって判断したほうが良い場合があります。

役員の任期というのは、例えれば野球選手などの複数年契約に似ています。
野球選手の場合は雇用契約なので年俸を勝手に下げることができず、会社役員の場合は委任契約なので報酬を上下できるという違いはありますが、何が似ているかといえば、正当な理由がない限り辞めさせる場合には違約金が発生する、という点です。
違約金は通常、任期の残りの期間分の役員報酬が、算定基準となります。
役員任期を10年にするということは、10年間役員として迎えることを約束するのと同じことなのです。特に問題を起こしたわけでもないのに何らかの事情で解任するようなことになれば、任期の残り期間については会社は役員報酬相当額を違約金として支払わなければなりません。

さて、10年という期間は、かなり長いです。経営には「おカネ」の話がついてまわりますので、家族・親族であっても将来の関係がどうなるかは誰にもわかりません。他人であればなおのことです。
そのため、役員が一人とか家族ならばともかく、知人友人などに役員への就任を依頼する場合には、親しい仲であるからこそ、役員任期は長くても5年程度に収めておくべきではないかと私たちは考えています。

なお、任期を長くすると、いざ任期が満了した時には忘れてしまっている危険性があります。
任期の到来を忘れたままにしておくと、「過料」という反則金がかかります
また、何も登記をしないまま12年以上放置すると、実質的に活動していないとみなされて強制的に解散させられる可能性もあります。
でも、ご安心ください。
司法書士法人ひびきをご利用いただいているお客様には、必ず次回の任期到来時に、私たちからご連絡させていただきますので!

作成:八潮三郷の司法書士法人ひびき