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011 相続時精算課税制度は相続対策になるか(2)【節税・納税資金対策編】

011 相続時精算課税制度は相続対策になるか(2)【節税・納税資金対策編】

楽天の田中将大投手が昨夜も勝利投手となり、とうとう無傷の開幕24連勝を達成しました。
無敗での最多勝投手はもちろんプロ野球史上初。素晴らしい大記録ですね。

試合後のインタビューで「一試合一試合集中してきた結果です」と答えていましたが、私もこのお役立ち情報を一記事一記事集中して作っていきたいと思います(本当か?)。

さて、前回に引き続き『相続時精算課税制度は相続対策になるか』です。

前回は【相続時精算課税制度は遺産紛争対策になるか】という視点から考えてみましたが、今回は【相続税対策や納税資金対策になるか】という視点で考えてみたいと思います。

 

相続税対策として相続時精算課税制度は役に立つか (原則×)

結論から申し上げれば、原則として相続時精算課税制度を利用しても節税には効果がありません。ただし例外もあります。

 

原則として暦年課税のほうが有利

そもそも相続時精算課税制度は、本来であれば贈与の時にかかる贈与税を無税または少額にしておき、後で贈与者が亡くなった時に相続税で精算する制度です。

相続が発生したら、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産の価額を故人の相続財産に加えて、この合計に対して相続税がかかります。従いまして、基本的に相続税を安くする効果はないわけです。

さらに、相続時精算課税制度を使って贈与した財産が住宅などの場合、その住宅などは相続税の計算のときに小規模宅地の特例が効きません。小規模宅地特例が効く不動産を相続時精算課税制度で贈与することは避けるべきです。

一方、通常の暦年課税制度ではどうでしょうか?

暦年課税制度では、毎年、もらう人1人当たり110万円まで非課税です(基礎控除)。
10年間、毎年こつこつと贈与すれば、1,100万円の財産を非課税で贈与できます。
仮にその時点で贈与者が亡くなって相続が発生すれば、最後の3年分は相続税の対象になるものの、それ以前の贈与財産に相続税はかかりません。

贈与する方がまだまだお元気なのであれば、相続時精算課税制度ではなく暦年課税制度を利用したほうが、断然、相続税の節税になります。

相続時精算課税制度を利用すると、暦年課税制度を併用することはできません。また、相続時精算課税制度の利用をやめて暦年課税制度に戻ることもできません。

このように、相続時精算課税制度では相続税対策にならないどころか、節税の面ではあべこべに税負担が増えてしまう可能性があります。

 

例外的に節税になる場合

ただし、次のケースでは、相続時精算課税制度を利用することによって、相続税などの節税につながる可能性があります。


・近い将来に値上がりすることが確実な財産を贈与するケース

贈与者が亡くなって相続が発生したら、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産の価額を故人の相続財産に加えて、この合計に相続税がかかりますが、このときに加算するのは『贈与時の評価額』で、『相続時の評価額』ではありません

そのため、近い将来に値上がりすることが確実な財産を相続時精算課税制度を利用して贈与すると、結果的に相続税の節税になります。
たとえば次のような財産です。
・今は市街化調整区域だが、近い将来、市街化区域に編入されることが確実な土地
・近い将来に駅や大きな道路ができることが確実な土地
・今後も安定した成長が見込まれる会社の株式・自社株


・賃貸アパートなどの収益財産を贈与するケース

賃貸アパートなどの収益を生む財産を相続時精算課税制度を利用して贈与した場合には、次のような税務上のメリットがあります。

(1)贈与後の収益が親に入らなくなるので、親の所得税を減らします。所得税は累進課税なので、子の収入が親より大幅に少なければ世帯としての所得税負担が大幅に下がることもあります。
(2)贈与後の収益が親に入らなくなるので、相続財産が増加することを防ぎ、結果として相続税の節税になります。
(3)贈与後の収益が子に入るので、きちんと貯めれば親が亡くなった時の相続税の納税資金にあてられます。

賃貸アパートを贈与する場合、敷地と建物をセットで贈与することも、建物だけを贈与することも可能です。
建物だけを贈与した場合でも収益はすべて子に行きますので、これらのメリットをすべて享受できます。
(建物だけの贈与の場合は敷地は使用貸借となり、相続のときには貸家建付地として評価できず、更地評価になってしまいますが)

ただし、賃貸アパート等を生前贈与する場合には、次の点に注意が必要です。

(a)贈与するのは借入金が残っていない財産にしてください

賃貸アパートの建設などでは金融機関の融資を受けることが多いと思いますが、賃貸アパートを子に贈与して、その借入金も子が承継すると、これは『負担付贈与(民法551条他)』になってしまいます。

単なる贈与ならば、その財産は『相続税評価額』で評価して、納税額を決めます。
『相続税評価額』は時価よりも割安です。しかも賃貸アパートの場合、建物は貸家、敷地は貸家建付地として評価することができ、自己使用の場合より評価額が下がるメリットがあります。

ところが、土地家屋などの負担付贈与の場合、その財産を評価するには相続税評価額を使うことはできず、『通常の取引価額(時価)』で評価しなければならないという、有名な負担付贈与通達があるのです(平成元年3月29日直評5)。こうしないと、借入金とセットで贈与することによって贈与税の負担を回避できてしまうからです。

『負担付贈与』では評価額が高くなり、結果的に税負担が大きくなります。そのため、贈与する収益財産は借入の残っていないものにすることが重要です。

(b)敷金相当額も同時に贈与してください

賃貸アパートなどでは、入居者から敷金(保証金)を預かっていることが多いです。
敷金は、原則的に退去時に賃借人に返還する義務があり、返さなければなりません。

この状態で賃貸アパートを贈与すると、敷金返還義務も承継することになり、これは上記(a)と同じ負担付贈与になってしまいます。負担付贈与になると評価額が跳ね上がってしまうかもしれません。

そこで、返還すべき敷金に相当する現金を同時に贈与しておけば、実質的には負担付贈与にあたりません。
こうすれば通常どおり、お得な『相続税評価額』でアパートを評価することができます。

 

納税資金対策として相続時精算課税制度は役に立つか (微妙)

相続時精算課税制度を利用すれば、まとまった金額を一度に贈与できますのでもちろん将来の相続税の備えにはなります。

しかし、上記のとおり相続時精算課税制度はほとんど節税対策になりませんから、納税資金のために本制度を利用するのは非常にもったいないです(収益財産の贈与は別です)。
現金を贈与しても使われてしまえば、そもそも納税資金対策になりません。

納税資金対策として考えれば、相続税の非課税枠もある生命保険(一時払い終身保険など)の活用を、まずは検討すべきかと考えられます。

 

 

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