001 後見人による支援内容とご本人への影響

『成年後見』のパターンでご本人への支援が始まると、家庭裁判所が選任した『成年後見人』は次のような権限をもってご本人を支援します。また、ご本人は次のような影響を受けます。

なお、成年後見人を辞任するには、家庭裁判所の許可が必要で、勝手に辞任できません。

1.ご本人に関する行為は、すべて成年後見人が代わりに行う 

ご本人の財産に関する行為は、代理人として、すべて成年後見人が行います。

たとえば、ご本人名義の不動産を売却する場合には、成年後見人がご本人の代理人であることを明らかにして、ご本人のために売買契約を締結し、売買代金の受領・名義変更まで成年後見人として行います。

施設入所契約や介護契約など、本人にとって必要な生活や療養に関することについても、成年後見人が代理して行います。

なお、次の行為をするときには、事前に家庭裁判所の許可が必要です。

・ご本人が住むための土地や建物を売却するとき
・ご本人が住むための土地や建物に抵当権を設定するとき
・ご本人が住むための土地や建物を他人に貸すとき
・ご本人が住んでいるアパートなどの契約を解除するとき

2.ご本人が単独で行った行為は取り消すことができる

ご本人が単独で行った財産についての行為は、成年後見人が取り消すことができます。成年後見人をとおさずにご本人が高額な骨董品を購入したというような場合、成年後見人はこれを取り消し、代金を返してもらうことができます。

ただし、日常生活に必要な買い物については、ご本人が一人で行った場合でも取り消すことはできません。

3.成年後見人はご本人の財産管理を行い、後見事務を報告する

自分の財産を管理する能力が不十分なご本人に代わり、成年後見人が全財産を管理します。

成年後見人に就任したら1ヶ月以内に財産目録を作成し、年間の収支見込みをまとめて家庭裁判所に提出するなどの義務があります。

成年後見人は、ご本人の財産を帳簿管理し、その職務内容や財産の変動を1~2年ごとに家庭裁判所に報告しなければいけません(後見事務報告)。

4.成年後見人はご本人に対して義務を負う 

「意思尊重義務」:成年後見人は、職務を行うにあたってご本人の意思を尊重しなければなりません。

「身上配慮義務」:成年後見人は、職務を行うにあたってご本人の心身の状態や生活状況に配慮しなければなりません。

5.成年後見がはじまると、ご本人には次のような影響がある

市町村に届け出ている実印の印鑑登録が抹消され、印鑑証明が発行されなくなります。

次のような資格については制限され、ご本人はその地位を失います。
会社役員・医療法人役員・医師・国家公務員・弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社会福祉士・介護福祉士・質屋営業許可など

なお、選挙権・被選挙権は、平成25年7月1日以降に公示・告示される選挙について制限がなくなりました。

戸籍にはのりません。法務省の後見登記簿に記載されるだけです。

 

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき