002 保佐人による支援内容とご本人への影響

『保佐』のパターンでご本人への支援が始まると、家庭裁判所が選任した『保佐人』は次のような権限をもってご本人を支援します。また、ご本人は次のような影響を受けます。

なお、保佐人を辞任するには、家庭裁判所の許可が必要で、勝手に辞任できません。

1.ご本人が重要な行為をするには、保佐人の同意が必要になる 

ご本人の財産に関する行為のうち重要な、以下の9つの行為すべてについては、保佐人の同意が必要になります。

(1)貸したお金を返してもらったり、預貯金の払い戻しをしたりすること
(2)お金を借りたり、他人の保証人になること
(3)高額な財産を購入したり手放したりすること
(4)裁判を起こすこと
(5)贈与すること・和解すること
(6)相続を放棄すること・遺産分割の話し合いをすること
(7)贈与を受けるのを断ること
(8)新築・改築・増築や大修理をすること
(9)一定の機関を超える賃貸借契約をすること

これら以外の行為は、ご本人が一人で行うことができます。

2.ご本人が単独で行った重要な行為は取り消すことができる 

ご本人が単独で行った財産についての行為のうち、上の9つの行為すべては、保佐人が取り消すことができます。
保佐人の同意なくご本人が高額な骨董品を購入したというような場合、保佐人はこれを取り消し、代金を返してもらうことができます。

3.申立てによって家庭裁判所に認められた行為については、代理できることも

『成年後見人』と異なり、保佐人は、原則としてご本人の代わりに財産的な行為をすることはできません。介護サービスなどの生活や療養看護に関する契約についても同じです。
保佐人の権限は、ご本人に勧めたり同意したりする程度に限定されているのです。

ただし、「一定の財産の管理や処分について、保佐人に代理権を与えてほしい」という申立てを家庭裁判所に行い、これが認められると、その部分についてだけの代理権が保佐人に与えられます。これを『代理権付与の申立て』といいますが、この場合、代理権を付与しても良いか家庭裁判所がご本人の意思を確認します。

保佐人に就任したら1ヶ月以内に財産目録を作成し、年間の収支見込みをまとめて家庭裁判所に提出するなどの義務があります。

保佐人は、ご本人の財産を帳簿管理し、その職務内容や財産の変動を1~2年ごとに家庭裁判所に報告しなければいけません(保佐事務報告)。

4.保佐人はご本人に対して義務を負う

「意思尊重義務」:保佐人は、職務を行うにあたってご本人の意思を尊重しなければなりません。

「身上配慮義務」:保佐人は、職務を行うにあたってご本人の心身の状態や生活状況に配慮しなければなりません。

5.保佐がはじまると、ご本人には次のような影響がある

次のような資格については制限され、ご本人はその地位を失います。

会社役員・医療法人役員・医師・国家公務員・弁護士・司法書士・行政書士・税理士・社会福祉士・介護福祉士など

『成年後見』のパターンと異なり、実印の登録は抹消されません。ご本人の印鑑証明書も出ます。
戸籍にはのりません。法務省の後見登記簿に記載されるだけです。

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき