司法書士法人ひびき 八潮三郷

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023 夫婦間で居住用不動産等を贈与した場合の配偶者控除

1.贈与税の配偶者控除とは

たとえ相手が配偶者であっても、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える生前贈与をすると、通常は贈与税がかかります。

しかし、居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭を、配偶者に生前贈与した場合には、一定の条件下で最高2,000万円(贈与された居住用不動産等の価格が上限)までを控除することができます。これが贈与税の配偶者控除です。基礎控除額110万円とあわせて2,110万円相当までは、贈与税がかかることなく配偶者に贈与できます。

これは、長年連れ添った配偶者の内助の功に報いるための制度です。
夫から妻でも、妻から夫でも、どちらでも適用を受けることができます。
この特例を利用できるのは、同一配偶者からは1回限りです。

「相続税の配偶者控除」とはまったく別の制度なのでご注意ください。

 

2.贈与税の配偶者控除を受けるための要件

(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(戸籍上の婚姻期間を指します。内縁の期間は含みません)

(2) 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること、または居住用不動産を取得するための金銭であること

(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

(4) 同じ配偶者からの贈与について、過去にこの特例の適用を受けていないこと(注)

(5) 一定の書類を添付の上、贈与税の申告をすること

(注) 同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

 

3.相続税との関係

生前贈与の後、3年以内に贈与者が亡くなった場合には、通常は贈与財産の価額が相続財産に加算され、相続税の対象になります(相続あんしん相談室Q&A Q052)。
しかし、この特例を利用した贈与については、その後3年以内に贈与者が亡くなっても、相続財産に加算されません

つまり、贈与税も相続税も課税されずに移転できます

ただし、次の点に注意が必要です。

 

4.贈与税の配偶者控除を利用する際の注意

(1)コストの問題

たしかに贈与税はかからないのですが、次の税金はかかります。

不動産取得税(地方税。納付書で納める)
・登録免許税(登記の際にかかる)

既に所有している居住用不動産を贈与するような場合には、不動産取得税も登録免許税も特例がないため、結構な額の税金を納めること(数十万円)になります。

既存不動産を贈与するのではなく、資金を贈与して新築住宅を購入すれば(夫婦共有でも良い)、これらの税金についても特例があるほか、マイホーム購入に認められている各種の税制特例も活用できます。
お連れ合いに新しいマイホームの共有持分をプレゼントし、節税しながら豊かなセカンドライフを送るのは、悪くないかもしれません。

 

(2)相続税対策として考えると

配偶者に対しては『相続税』のほうでも控除があり、法定相続分相当額までは相続税がかからない仕組みになっています。そのため、上記(1)のようなコストをかけて居住用不動産を生前贈与するというのは、『相続税対策』としてだけ考えると、あまり節税効果は期待できません。むしろ、コストの分だけマイナスになる可能性もあります。

資産が多い方の場合には、本特例を利用して配偶者に生前贈与しても、相続税のほうの配偶者控除を利用して配偶者が相続しても、その配偶者が亡くなったとき(二次相続)には、やはり相続税に頭を痛めることになります。

そのため、本特例を活用する意味があるのは、次のようなケースが基本形となります。
(a)コストを負担してでも、配偶者の居住用不動産を確保する必要がある場合
(b)夫婦の豊かなセカンドライフを目指し、前述のように新築住宅の購入を前提として資金を贈与する場合
(c)財産総額が、
相続税の基礎控額をわずかに超えるような場合
(本特例を利用して財産総額を相続税の基礎控除以下に落とせば、一次相続での相続税申告は不要となり、遺産分割で二次相続に配慮した分割を行えば二次相続での相続税申告も不要になる。
贈与税の申告は簡単で自分でもできるが、相続税の申告は難しく税理士報酬が非常に高額であるので、各種コストをかけてでも本特例を使うメリットがある)

もっとも、本特例を利用して居住用不動産をもらい受けた配偶者のほうが先に亡くなり、子がその居住用不動産を相続すれば、相続税の節税効果があります。

 

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012 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例とは

贈与税の特例として、平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を使って居住用家屋の新築や増改築をした場合には、贈与された住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。

この制度は、若手世代へ早期に資産を移転する目的のほか、省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅を供給するという目的があります。そのため、いわゆる高性能住宅については非課税限度額が大きくなっています。

非課税という大きな効果があるいっぽう、この特例を受けるには結構細かい要件がありますので注意が必要です。

また、本特例を受けてもらいうけた住宅取得等資金は、贈与者に相続が発生した場合には特別受益の持戻しの対象になるほか、遺留分減殺請求の算定基礎に含まれるケースが多いと考えられますので、将来の相続争いの原因とならないよう、他の相続人とのバランスに配慮しておくべきでしょう。

適用要件

直系尊属からの住宅取得等資金贈与非課税特例

受贈者(もらう人)の要件

(1) まず、次のイ・ロ・ハのどれかに該当する必要があります。

イ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの、日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ 贈与を受けた時に、日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有していること。

(2) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
直系卑属とは子や孫などのことですが、子や孫などの配偶者は含まれません。養子縁組していれば含まれます。

(3) 贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。

(4) 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

住宅取得等資金の要件

住宅取得等資金とは、受贈者(もらった人)が自己の居住の用に供する家屋新築取得したり、自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。
これらの「居住用家屋の新築・取得又はその増改築」には、次のものも含まれます。

・その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得(建売やマンションの敷地のことです)

・住宅用の家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限ります。)に先行してするその敷地の用に供される土地や借地権などの取得(敷地を先行取得した場合です。注文住宅でも適用が認められました!)

注意!
受贈者は建物を取得すること、つまり『家屋』に受贈者の持分があることが条件となります。たとえば、妻の父から資金贈与を受けて妻名義で土地を取得し、夫がローンを組んで注文住宅を建てた場合には、建物に妻の持分がないので本特例を受けることができません。この場合には夫の住宅ローンを減らして妻の自己資金の一部を建物の請負代金に充当すれば、妻の持分を建物に入れることができます。

ただし、もらった人の一定の親族など、受贈者と特別の関係がある人との請負契約等によって新築や増改築等をする場合や、このような人から取得する場合には、この特例の適用を受けることはできません。受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある人とは、次のような人をいいます。

(1) 受贈者の配偶者及び直系血族
(2) 受贈者の親族((1)以外の人)で受贈者と生計を一にしている人
(3) 受贈者と内縁関係にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしている人
(4) (1)から(3)に掲げる者以外の者人で受贈者から受ける金銭等によって生計を維持している人、およびその人の親族でその人と生計を一にしている人

居住用家屋の新築・取得、および増改築の要件

(1)  居住用の家屋の要件
居住用の家屋とは、次のイ・ロ・ハのすべての要件を満たす日本国内にある家屋をいいます。
(なお、居住用の家屋が2つ以上ある場合には、受贈者が主として居住用としている1つの家屋だけです。)

イ 家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。

ロ 購入する家屋が中古の場合は、家屋の構造によって次のような制限があります。(a) 耐火建築物である家屋の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
(b) 耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。ただし、地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものについては、建築年数の制限はありません。

ハ 床面積の2分の1以上に相当する部分が居住専用であること。

(2)  増改築等の要件
特例の対象となる増改築等とは、受贈者が日本国内に所有し、かつ、自己の居住の用に供している家屋について行われる増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替その他の工事のうち一定のもので次のイ・ロ・ハのすべての要件を満たすものをいいます。

イ 増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければなりません。

ロ 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が居住専用に供されること。

ハ 増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下であること。

居住要件

新築、取得又は増改築等のどの場合であっても、住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに、資金受贈者(もらった人)が住宅用家屋等を居住していることか、または、住宅用家屋等に居住することが確実であると見込まれることが要件となります。
ただし、転勤のようなやむをえない事情がある場合には、家族などの同一生計者がその住宅に居住していれば大丈夫です。

 

非課税限度枠

次の区分により、2012年(平成24年)1月1日から2014年(平成26年)12月31日までの間の受贈者1人についての非課税限度額は、次のとおりとなります。
受贈者1人について適用される上限です。複数の人(たとえば父と母両方)から贈与を受けた場合には、合計で以下の金額が上限となります。

(1) 省エネ等住宅の場合  最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて、次の金額が非課税限度額となります。

イ 2012年(平成24年)のときは1500万円
ロ 2013年(平成25年)のときは1200万円
ハ 2014年(平成26年)のときは1000万円

省エネ等住宅」とは、省エネ等基準(省エネルギー対策等級4相当以上であること、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上であること又は免震建築物であることをいいます。)に適合する住宅用の家屋であることについて、住宅性能証明書、建設住宅性能評価書の写し、又は長期優良住宅認定通知書の写し及び認定長期優良住宅建築証明書などを、贈与税の申告書に添付することにより証明がされたものをいいます。

(2) (1)以外の一般住宅の場合  最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて、次の金額が非課税限度額となります。

イ 2012年(平成24年)のときは1000万円
ロ 2013年(平成25年)のときは  700万円
ハ 2014年(平成26年)のときは  500万円

 

相続時精算課税制度と比べてみる

本制度は暦年課税制度や相続時精算課税制度との併用が可能です。
たとえば、2014年に省エネ住宅で本制度を利用して贈与する場合には1000万円の非課税枠ですが、年間110万円の基礎控除と合わせて1110万円を非課税で贈与することが可能です。

さて、それでは本制度と相続時精算課税制度を比較してみましょう。パソコンなら横に並んで見えるはずです。
相続時精算課税の適用要件直系尊属からの住宅取得等資金贈与非課税特例

 

011 相続時精算課税制度は相続対策になるか(2)【節税・納税資金対策編】

楽天の田中将大投手が昨夜も勝利投手となり、とうとう無傷の開幕24連勝を達成しました。
無敗での最多勝投手はもちろんプロ野球史上初。素晴らしい大記録ですね。

試合後のインタビューで「一試合一試合集中してきた結果です」と答えていましたが、私もこのお役立ち情報を一記事一記事集中して作っていきたいと思います(本当か?)。

さて、前回に引き続き『相続時精算課税制度は相続対策になるか』です。

前回は【相続時精算課税制度は遺産紛争対策になるか】という視点から考えてみましたが、今回は【相続税対策や納税資金対策になるか】という視点で考えてみたいと思います。

 

相続税対策として相続時精算課税制度は役に立つか (原則×)

結論から申し上げれば、原則として相続時精算課税制度を利用しても節税には効果がありません。ただし例外もあります。

 

原則として暦年課税のほうが有利

そもそも相続時精算課税制度は、本来であれば贈与の時にかかる贈与税を無税または少額にしておき、後で贈与者が亡くなった時に相続税で精算する制度です。

相続が発生したら、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産の価額を故人の相続財産に加えて、この合計に対して相続税がかかります。従いまして、基本的に相続税を安くする効果はないわけです。

さらに、相続時精算課税制度を使って贈与した財産が住宅などの場合、その住宅などは相続税の計算のときに小規模宅地の特例が効きません。小規模宅地特例が効く不動産を相続時精算課税制度で贈与することは避けるべきです。

一方、通常の暦年課税制度ではどうでしょうか?

暦年課税制度では、毎年、もらう人1人当たり110万円まで非課税です(基礎控除)。
10年間、毎年こつこつと贈与すれば、1,100万円の財産を非課税で贈与できます。
仮にその時点で贈与者が亡くなって相続が発生すれば、最後の3年分は相続税の対象になるものの、それ以前の贈与財産に相続税はかかりません。

贈与する方がまだまだお元気なのであれば、相続時精算課税制度ではなく暦年課税制度を利用したほうが、断然、相続税の節税になります。

相続時精算課税制度を利用すると、暦年課税制度を併用することはできません。また、相続時精算課税制度の利用をやめて暦年課税制度に戻ることもできません。

このように、相続時精算課税制度では相続税対策にならないどころか、節税の面ではあべこべに税負担が増えてしまう可能性があります。

 

例外的に節税になる場合

ただし、次のケースでは、相続時精算課税制度を利用することによって、相続税などの節税につながる可能性があります。


・近い将来に値上がりすることが確実な財産を贈与するケース

贈与者が亡くなって相続が発生したら、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産の価額を故人の相続財産に加えて、この合計に相続税がかかりますが、このときに加算するのは『贈与時の評価額』で、『相続時の評価額』ではありません

そのため、近い将来に値上がりすることが確実な財産を相続時精算課税制度を利用して贈与すると、結果的に相続税の節税になります。
たとえば次のような財産です。
・今は市街化調整区域だが、近い将来、市街化区域に編入されることが確実な土地
・近い将来に駅や大きな道路ができることが確実な土地
・今後も安定した成長が見込まれる会社の株式・自社株


・賃貸アパートなどの収益財産を贈与するケース

賃貸アパートなどの収益を生む財産を相続時精算課税制度を利用して贈与した場合には、次のような税務上のメリットがあります。

(1)贈与後の収益が親に入らなくなるので、親の所得税を減らします。所得税は累進課税なので、子の収入が親より大幅に少なければ世帯としての所得税負担が大幅に下がることもあります。
(2)贈与後の収益が親に入らなくなるので、相続財産が増加することを防ぎ、結果として相続税の節税になります。
(3)贈与後の収益が子に入るので、きちんと貯めれば親が亡くなった時の相続税の納税資金にあてられます。

賃貸アパートを贈与する場合、敷地と建物をセットで贈与することも、建物だけを贈与することも可能です。
建物だけを贈与した場合でも収益はすべて子に行きますので、これらのメリットをすべて享受できます。
(建物だけの贈与の場合は敷地は使用貸借となり、相続のときには貸家建付地として評価できず、更地評価になってしまいますが)

ただし、賃貸アパート等を生前贈与する場合には、次の点に注意が必要です。

(a)贈与するのは借入金が残っていない財産にしてください

賃貸アパートの建設などでは金融機関の融資を受けることが多いと思いますが、賃貸アパートを子に贈与して、その借入金も子が承継すると、これは『負担付贈与(民法551条他)』になってしまいます。

単なる贈与ならば、その財産は『相続税評価額』で評価して、納税額を決めます。
『相続税評価額』は時価よりも割安です。しかも賃貸アパートの場合、建物は貸家、敷地は貸家建付地として評価することができ、自己使用の場合より評価額が下がるメリットがあります。

ところが、土地家屋などの負担付贈与の場合、その財産を評価するには相続税評価額を使うことはできず、『通常の取引価額(時価)』で評価しなければならないという、有名な負担付贈与通達があるのです(平成元年3月29日直評5)。こうしないと、借入金とセットで贈与することによって贈与税の負担を回避できてしまうからです。

『負担付贈与』では評価額が高くなり、結果的に税負担が大きくなります。そのため、贈与する収益財産は借入の残っていないものにすることが重要です。

(b)敷金相当額も同時に贈与してください

賃貸アパートなどでは、入居者から敷金(保証金)を預かっていることが多いです。
敷金は、原則的に退去時に賃借人に返還する義務があり、返さなければなりません。

この状態で賃貸アパートを贈与すると、敷金返還義務も承継することになり、これは上記(a)と同じ負担付贈与になってしまいます。負担付贈与になると評価額が跳ね上がってしまうかもしれません。

そこで、返還すべき敷金に相当する現金を同時に贈与しておけば、実質的には負担付贈与にあたりません。
こうすれば通常どおり、お得な『相続税評価額』でアパートを評価することができます。

 

納税資金対策として相続時精算課税制度は役に立つか (微妙)

相続時精算課税制度を利用すれば、まとまった金額を一度に贈与できますのでもちろん将来の相続税の備えにはなります。

しかし、上記のとおり相続時精算課税制度はほとんど節税対策になりませんから、納税資金のために本制度を利用するのは非常にもったいないです(収益財産の贈与は別です)。
現金を贈与しても使われてしまえば、そもそも納税資金対策になりません。

納税資金対策として考えれば、相続税の非課税枠もある生命保険(一時払い終身保険など)の活用を、まずは検討すべきかと考えられます。

 

 

010 相続時精算課税制度は相続対策になるか(1)【遺産紛争対策編】

このところ、オフィシャルサイトの更新がなかなか進みません。
『相続あんしん相談室』のほうにかかりきりなもので、決してサボっているわけではないのです…

さて、今回は『相続時精算課税制度は相続対策になるか』を考えてみたいと思います。

相続時精算課税制度を使って贈与する最大の目的は、やはり相続対策でしょう。
「いやいや相続なんて関係ないよ~ただただ早く息子に財産をあげたくてしょうがないんだよ~」などという方は、かなり少数派だと思われます(多分)。

相続対策といえば、必ず『遺産紛争対策』『納税資金対策』『相続税対策』の三点セットで考えるのが原則です。
そこで、これら3つの観点からこの制度がどのていど使えるものなのか検証してみます。
あくまで私見ですので、この記事を参考にして制度を利用した、あるいは利用しなかった場合でも、責任は負いかねます…

 

遺産紛争対策として相続時精算課税制度は役に立つか? (微妙)

法律や税務の専門家でもない限り、相続時精算課税制度を利用して財産を生前に贈与してしまえば、相続争いにはならないと考えてしまいがちです。しかし必ずしもそうとは言い切れないのです。

ここに彦左衛門さんという方がいらっしゃるとします。
彦左衛門さんには、将来の相続人となる子供が、太郎・二郎・花子の3人いるとして、
「ワシは、どうしても花子に宇都宮の土地をもたせたいのじゃ!」
と考えるならば、相続時精算課税制度を使って、花子に宇都宮の土地を贈与することは十分ありえます。

ある特定の財産を、相続にかからせることなく確実に承継させることができるという点では、生前贈与は有効といえるでしょう。特に自社株の生前贈与は、事業承継対策のひとつとして十分検討する価値があります。

ただし、同時に2つの点に配慮する必要があります。
1つは『特別受益』の問題、もう1つは『遺留分』の問題です。

特別受益にあたるか

1つめの問題である『特別受益』ですが、これは相続が発生したときに、被相続人から遺贈を受けたり、遺産の前渡しと見られるような生前贈与などを受けたりした相続人(”特別受益者”といいます)がいる場合に、そうでない相続人と公平になるように、法定相続分や指定相続分を調整する制度です。

太郎や二郎にしてみれば、彦左衛門さんが亡くなって遺産を分割することになれば、
「花子は宇都宮の土地を生前にもらったのだから、遺産の配分は少なくていいだろう」
と考えるのは自然な成り行きです。

花子がもらった宇都宮の土地は意外にも(?)資産価値が高く相続時精算課税制度を利用して申告までしていますから、遺産の前渡し的要素が強いといえます。花子がもらった宇都宮の土地は、実務的にはまず特別受益財産と考えられるでしょう。

そこで、特別受益者である花子が生前贈与で得た宇都宮の土地の価額(相続開始時の時価)を、特別受益として相続財産に組み入れ(これを”特別受益額の持ち戻し”といいます)、これをベースにして各相続人の相続分を算出します。

仮に彦左衛門さんの遺産が1億あって、花子に贈与した宇都宮の土地の相続開始時の時価が5,000万だったら、この5,000万を彦左衛門さんの遺産に持ち戻し、彦左衛門さんの遺産を1億5,000万として太郎・二郎・花子の相続分を出すわけです。
それぞれの法定相続分は均等に3分の1ですから、それぞれ5,000万ずつになりますね。

そして、特別受益者である花子はすでに5,000万相当の不動産をもらっいるので、遺産分割にあたって花子に配分される遺産はありません。
でも、宇都宮の土地を花子に持たせたいという彦左衛門さんの目的は達成されました。

仮に、計算の結果花子がもらった宇都宮の土地の評価が相続分より多かったとしても、太郎や二郎の遺留分を侵害しない限り贈与財産を返す必要はありませんから、宇都宮の土地は無事花子のものとなり、やはり彦左衛門さんの目的は達成されることになります。

「いや、花子には宇都宮の土地を贈与したが、それは相続とは別枠で、相続のときには残りの遺産を均等に配分してもらいたい」
彦左衛門さんがこのように考えるならば、遺言などで『持ち戻し免除の意思表示』というものをしておく必要があります。明確に意思表示をしなくても、裁判上では持ち戻し免除の意思表示を推認されることも少なくないですが、はっきりと遺言などで明示しておくほうがよいでしょう。

なお、どのような財産が持ち戻しの対象となるかについては裁判上で争いになることが多いですが、相続時精算課税による贈与の場合、金額が大きく受贈者もはっきりと贈与と認識して申告していますから、ほぼ確実に持ち戻しの対象となるでしょう。

また、持ち戻しの対象となる贈与は、期間の制限がなく、何十年前の贈与でも対象になります。
この点は、相続税の課税対象となる贈与財産が、相続発生前3年以内の贈与に限られることと大きく違います。

ともかく、これで宇都宮の土地は花子のものになりました。めでたしめでたし…
と思いたいところですが、そう言えるのは彦左衛門さんが宇都宮の土地以外にも資産があるからです。

宇都宮の土地を花子に贈与したことによって、太郎と二郎の『遺留分』を侵害していれば、これをめぐってきょうだいの間で紛争が生じる可能性があります。

 

遺留分侵害との関係

彦左衛門さんの財産が宇都宮の土地しかなければ、これを花子に贈与したことによって、彦左衛門さんに万一の事があっても太郎と二郎はまったく相続するものがなくなってしまいます。
このような不公平を是正するのが『遺留分制度』です。

民法1030条では、「遺留分の算定計算をするときは、一定の贈与財産価額を加えなさい」と定めています。
基本的には、ここでいう一定の贈与とは次の二つです。
1)相続開始前1年間の贈与
2)1年以上前の贈与でも、当事者双方が相続人の遺留分を侵害することを知ってなした贈与

これだけを読むと、彦左衛門さんと花子の二人ともが太郎・二郎の遺留分を侵害することを認識していなければ問題なさそうに思えてしまいます。
しかし、相続人に対する生前贈与(特別受益)は、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、すべて遺留分の算定計算において加算することになっています。遺留分の規定が特別受益の規定を引用しているため、相続人に対する贈与の時期や当事者の認識を問わずにすべて加算するのです(民法1044条による903条準用、昭和51年3月18日最高裁判決)。
よって、彦左衛門さんと花子に悪気がなくても、贈与財産である宇都宮の土地の価額は遺留分の算定計算に加えられます。

そして太郎・二郎は、この贈与が民法1030条の要件を満たさなくても、特別受益である贈与自体に遺留分減殺請求をすることができます(平成10年3月24日最高裁判決。ただし特段の事情ある場合を除く)。

花子が太郎・二郎に遺留分相当額を現金で支払えればいいですが、支払えなければ土地そのものを手放さざるを得なくなります。

 

遺産紛争対策としては使えなくもない

結局、相続時精算課税制度そのものはあくまで税制上のものであり、法律上は一般の生前贈与契約となんら変わるところはありません。したがって、通常の生前贈与同様、やはり受贈者以外の推定相続人が有する遺留分に対する配慮を欠かすことはできません。むしろ相続時精算課税を使うと特別受益としての性格が濃厚になるので、持ち戻しにどう対応するかなど、きちんと考慮する必要があります。

単純に遺産紛争対策として考えるならば、生前贈与は財産の内容によっては非常にコストがかかります。
たとえば不動産を贈与すれば登録免許税や不動産取得税が結構かかりますので、その点は遺言による対策と比べて見劣りがします。

また、まとまった財産を贈与することによって債権者を害することがあれば、詐害行為として取り消される可能性もあり、注意しなければなりません。

とはいえ、相続時精算課税制度を使えば相続を待たずしてまとまった財産を生前贈与きますので、もらった側が贈与財産を活用する予定があり、かつ納税資金対策や相続税対策も天秤にかけてメリットがあるならば、本制度を使ってみてもよいかも知れません。

特定の推定相続人に財産を集中させるために本制度を利用するだけではなく、遺留分放棄の代償として相続時精算課税制度による贈与を活用することも考えられます。

 

 

009 相続時精算課税制度(2) 適用要件と住宅資金等特例

相続時精算課税制度の適用要件

相続時精算課税制度の適用を受けるための要件は、まず下記の表をごらんください。
相続時精算課税の適用要件

相続時精算課税制度は、贈与者(あげる人)に年齢制限がある通常のものと、年齢制限がない『住宅取得資金等の特例』との2つがあります。
通常、相続時精算課税制度を利用するには、贈与者たる親は贈与した年の1月1日現在で65歳以上(2015年からは60歳以上)であることが必要です。

しかし、子が住宅を建てるような場合に親から資金贈与を受けるならば、あげる親の側は何歳でもかまわないという特例が設けられています(この特例についてはもう少し詳しく下記で触れます)。

注意点ですが、相続時精算課税制度を利用する場合の贈与者・受贈者の年齢は、贈与の年の1月1日を基準に判断します。
これをうっかりして間違えると、制度を利用できませんので注意してください。

住宅取得等資金の特例の、住宅などの要件

上記のように、2014年12月31日までの間に相続時精算課税制度を利用して居住用家屋の取得または増改築等のために親から資金贈与を受け、その全額で自宅を取得して居住した場合には、贈与する親の年齢は問いません。
なお、本特例では、贈与財産は『金銭』に限られます。

この特例を受けるための要件は次の通りですが、これは一般的な内容にすぎません。
本特例に関する税務通達は複雑です。
個別の事例について、本特例の適用を受けることができるかどうかは税務署または税理士にご相談ください。

(A)受贈資金の使い道

・住宅の新築または取得
・自宅の新築・取得と同時の、または自宅の新築に先行しての敷地の用に供される土地等の取得
・住宅の増築・改築・大規模修繕等
※住宅取得等資金を贈与により取得した年の翌年3月15日までに、その住宅取得等資金の全額により自宅の新築・取得・改築等を行い、同日までに受贈者の居住の用に供していること(または同日後遅滞なく居住の用に供することが確実と見込まれること)

(B)家屋の要件

(1)新築または取得した住宅用家屋の登記簿上の床面積(マンション等の区分所有建物では、その専有部分の床面積)が50㎡以上であること

(2)床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されること

(3)中古住宅の場合は以下の通り築年数制限があります。
・マンションなどの耐火建築物:取得日以前25年以内に建築されたものであること
・耐火建築物以外の建物:取得日以前20年以内に建築されたものであること
・新耐震基準適合建物については築年数制限なし(耐震基準証明書または住宅性能評価書の写しにより証明)

(4)その他、一定の要件を満たすもの

(C)増改築の要件

(1)増改築の工事費用が100万円以上であること

(2)増改築後の床面積(マンション等の区分所有建物では、その専有部分の床面積)が50㎡以上であること

(3)床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されること

(4)その他、一定の要件を満たすもの

作成:八潮三郷の司法書士法人ひびき

008 相続時精算課税制度(1) 制度趣旨と内容

相続時精算課税制度の趣旨

贈与税の税率と計算(暦年課税の場合)で見ましたように、贈与税の税率は高いため、そう簡単に大きな資産を生前贈与することはできません。

しかし、高齢化が進んでいる我が国では、相続による現役世代への資産移転がなかなか進みません。
どちらかと言えば、ご年配の方より若い方のほうがお金を使いますから、相続とは別の方法でスムーズに現役世代へ資産を移転して、どんどんお金を使ってもらえば、経済を活性化することができるかもしれません。

そこで、贈与税の特例を設け、ご年配の方から現役世代への生前贈与をやりやすくした制度が、『相続時精算課税制度』です(相続税法21条の9~)。

 

相続時精算課税制度の内容

具体的には、相続時精算課税制度では一定の要件を満たす贈与については2,500万円まで贈与税がかからず、2,500万円を超えても税率は20%で一律になっています。
このように”贈与税”については大幅に軽減されるのですが、財務省がそんなに太っ腹なわけはなく、贈与者に相続が発生した時点で納める”相続税”のほうで精算することになります。

具体的には、
1)相続が発生(贈与者の死亡)した時点での相続財産の価額
と、
2)この『相続時精算課税制度』を利用して贈与された財産の価額
の、
1)と2)の合計に対して相続税額を算出し、すでに支払っている贈与税を差し引いて税金を納付します。

言葉は悪いですが、税金をツケにするわけです。

ですから、この『相続時精算課税制度』を利用して財産をもらった人は、相続のときに何も財産を引き継がない場合でも、生前贈与でもらった財産の価額を”相続税”の課税価額に算入して、相続税を計算することになります。
なお、相続時精算課税制度の非課税枠(贈与者の生涯にわたって2,500万円)は、枠の上限に達するまで何度でも何年でも使うことができますが、贈与者が同じ場合には、暦年課税制度の非課税枠(毎年110万円)との併用はできず、元に戻すこともできません(贈与者が違うならば併用できます)。
相続時精算課税と暦年課税は併用不可相続時精算課税と暦年課税は親が違えば併用可能

 

 

 

 

非課税枠の扱い

また、『暦年課税制度』と『相続時精算課税制度』では、非課税枠の扱いに違いがあります。
複数の人から贈与によってもらった財産がある場合、
1)暦年課税制度では、『もらった人ごと』に毎年110万円の非課税枠
ですが、
2)相続時精算課税制度では、『あげた人ごと』に生涯で2,500万円の非課税枠
となります。
複数の『あげた人』にそれぞれ相続が発生すれば、相続税はそれぞれ別に計算しますから、合算はしません。

暦年課税の非課税枠相続時精算課税の非課税枠

 

 

 

 

相続時精算課税制度での贈与税の計算

相続時精算課税制度を選択した場合の贈与税の計算を、具体例で説明すると次のようになります。

例:父と母からそれぞれ生前贈与を受け、父からの贈与についてだけ、相続時精算課税を選択した場合

【1年目】
相続時精算課税の場合の贈与税額計算事例1

 

 

 

 

 

(1)父からの贈与
【課税される金額の計算】1,000万円-1,000万円(特別控除額)=0
【翌年以降に繰り越される特別控除額の計算】2,500万円-1,000万円=1,500万円
(2)母からの贈与
【課税される金額の計算】400万円-110万円(基礎控除額)=290万円
(母からの贈与については、相続時精算課税を選択していませんので、2,500万円の特別控除額ではなく、110万円の基礎控除額をもらった額から控除し、通常通り計算します)
【贈与税額の計算】290万円×15%-10万円=33.5万円


 

【2年目】
相続時精算課税の贈与税の計算事例2

 

 

 

 

 

【課税される金額の計算】1,000万円-1,000万円(特別控除額)=0
【翌年以降に繰り越される特別控除額の計算】1,500万円-1,000万円=500万円


【3年目】
相続時精算課税の贈与税の計算事例2

 

 

 

 

 

【課税される金額の計算】1,000万円-500万円(特別控除額)=500万円
【贈与税額の計算】500万円×20%=100万円(贈与税額)

相続時精算課税を選択した場合、その後の撤回はできません。
また、相続時精算課税の特別控除を受けるためには、贈与税の期限内申告が必要です。

 

007 贈与税の税率と計算(暦年課税の場合)

贈与税を計算するには、2つのステップを踏んで計算します。
贈与税の計算方法は、相続税の計算方法に比べれば、はるかに単純です。

step1 まず、課税価格を計算する

贈与を受けた年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与によってもらった財産の価額を合計します。これが課税価額です。

複数の人から贈与によってもらった財産があれば、すべて合計する点に注意してください。
例として、父親から3月1日に100万円、8月1日に200万円、母親から10月1日に300万円もらったならば、100万+200万+300万=600万円が課税価額となります。

なお、贈与によってもらった財産が金銭でない場合、相続税評価額で評価して課税価額を算出します。たとえば市街化区域の土地ならば路線価によります。

step2 次に、贈与税額を計算する

課税価額を計算したならば、次に贈与税額の計算に移ります。
まず、基礎控除110万円をマイナスします(相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の3)。
1年間に複数の人から贈与を受けた場合でも、控除できる基礎控除額は贈与した人の人数に関わりなく110万円だけです。
step1の例では、600万円-110万円=490万円となります。

最後に、速算表の税率をかけ、速算表の控除額をマイナスすれば、贈与税額が計算できます。
贈与税の計算式

 

 

 

 

贈与税の速算表については下記のとおりですが、2015年1月1日以後の贈与については新しい速算表を使用します。
贈与税率2014まで

 

 

 

 

 

 

 

 

贈与税速算表2015a贈与税速算表2015b

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、上のほうで使った、600万円贈与を受けた事例で計算してみましょう。
まず、課税価額600万円から基礎控除額110万円を引くと、490万円。
これを上記の表にあてはめます。

2014.12.31まで
490万円×30%-65万円=82万円

2015.1.1から
a)原則
490万円×30%-65万円=82万円で変わらず。
b)20歳以上の者への直系尊属からの贈与の場合
490万円×20%-30万円=68万円

2015年からは、「20歳以上の者への直系尊属からの贈与」については、税額が下がることがわかります。
これは、消費することが少ない比較的ご年配の方から、消費することが多い現役世代に資産を移転することをうながし、経済を活性化させよう(そして消費税も取ろう)という政府の施策によるものです。

作成:八潮三郷の司法書士法人ひびき

 

006 扶養と贈与 おじいちゃんに生活費や学費を負担してもらったら贈与?

扶養義務者から生活費や教育費として必要な都度直接贈与を受けた財産で、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切を考慮して通常必要な金額については、贈与税は非課税とされています。

贈与税の非課税財産』の項目でも簡単に触れましたが、扶養義務者からもらった生活費や教育費に贈与税は課税されません。ただし、この点については注意が必要ですので詳しく解説します。
扶養と贈与

”扶養義務者”とは誰のこと?

第1に、夫婦です。
民法752条で『夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない』と定められています。

第2に、直系血族及び兄弟姉妹です。
『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』という規定が民法877条1項にあります。おじいちゃんと孫は血のつながりのある直系血族ですから、お互いに扶養義務があるわけです。
また、離婚した夫婦の間に扶養義務はありませんが、夫婦間の子供は直系血族ですから、離婚してもこの条文によって扶養義務があります。

第3に、家庭裁判所が扶養義務を負わせた三親等内の親族です。
民法877条2項では『家庭裁判所は、特別の事情があるときは・・・三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる』と定めています。
この場合には血族か親族かは問いませんので、おじおばとおいめい、配偶者のきょうだいなどについても、家庭裁判所の審判があれば扶養義務が発生します。
夫婦間や未成熟の子供に対しては扶養能力がある限り常に扶養義務を負いますが、その他の血族・親族の扶養 を受けるには、扶養を受ける側が自らの財力・労力では生活することが困難な要扶養者であることが必要です。

生活費や教育費をおじいちゃんが負担したら

さて、相続税法第23条の3で、『扶養当事者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要とされるもの』については贈与税の課税価格に算入しない、とされています。

したがって、生活費を家族(たとえばおじいちゃん)が全額負担したとしても、それが通常必要とされるものであるならば、贈与の問題にならず、税金もかかりません。

お孫さんが名古屋に嫁ぐのでトラック3台分の嫁入り支度を用意しても、お孫さんを医科大に入れて何百万も入学金を払おうと、そしてそれを払うのがおじいちゃんでもおばあちゃんでもお兄さんでも、扶養義務の範囲内ならば贈与税は非課税なのです。

「世間一般の感覚からすれば、医学部の学費を負担してあげるなんて扶養の範囲を超えるんじゃないの?」と思われるかも知れませんが、その家庭・要扶養者にとって『通常必要なもの』であれば課税されません。

ただし、そのつど使わなければダメです。まとめて渡してはいけません。
生活費や学費のつもりで現金を渡しておいた場合、預金されて残ってしまえば課税対象です。

また、使い道を証明できなければいけません
そのためには、たとえば塾の費用や大学の入学金・授業料を子や孫に渡して払わせるのではなく、直接振り込む ようにするべきでしょう。

さらに、受け取る側が要扶養者である必要がありますので、お孫さんが学生起業で億万長者であれば、おじいちゃんが学費を負担してあげる行為は扶養義務の範囲内とは認められないでしょう。

なお、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの期間限定で、『教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(租税特別措置法70条の2の2)』が実施されていますので、近いうちにこれについても解説したいと思います。

ちなみに、相続が発生した場合には、被相続人の資産状況や社会的地位・生活状況などの諸事情を総合的に判断して扶養義務の範囲内と認められない場合には、遺産の前渡しとして『特別受益』の問題を生じることも考えられます(お孫さんは通常、おじいちゃんの相続人ではありませんので、この問題にはなりませんが)。
扶養と贈与2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき

005 贈与税の非課税財産

贈与財産の中には、課税されない財産があります。これを『贈与税の非課税財産』といいます。

財産の性質や贈与の目的、国民感情や政策的配慮からみて、贈与税をかけるのは適切ではないと判断されているものです。

以下の財産を贈与によって取得した場合は、贈与税が非課税となります(相続税法第21条の3および4、および同条に関連する相続税基本通達)

法人からの贈与財産

贈与税は非課税ですが、所得税がかかります。
『法人』には、国・地方公共団体のほか、外国法人、法人格のない社団や財団も含みます。

夫婦や親子、祖父母、兄弟姉妹など、扶養義務者からもらった生活費や教育費

民法877条では直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があると定められ、特別の事情があるときは、家庭裁判所は三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができると定められています。
これを受けて税法では、配偶者及び民法第877条に定める親族を『扶養義務者』と呼び、扶養義務者から生活費教育費として必要な都度直接贈与を受けた財産で、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切を考慮して通常必要な金額については、贈与税は非課税です。
仕送りや学費などがこれにあたりますが、生活費や教育費以外の目的に使われているものや、通常必要な金額を超えて預金されているようなものには、贈与税が課税されます。

公益事業のために贈与を受けた財産

宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う一定の人が贈与により取得した財産で、公益事業に使われるものについては贈与税が非課税です。

一定の特定公益信託から給付された財産

いわゆる給付型の『奨学金』などで、贈与税は非課税です。

心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権

条例の規定により地方公共団体が設けている心身障害者共済制度については、その給付金は贈与税が全額非課税です。

特別障害者扶養信託契約に基づく信託受益権

特定贈与信託などと呼ばれて商品化されているもので、相続税法第19条の4第2項に規定する特別障害者を受益者とする特別障害者扶養信託契約については、特別障害者1名あたり6000万円まで、贈与税非課税の取り扱いとなっています。

公職選挙の候補者が、選挙運動のために贈与により取得した金品

国会議員、地方議員、知事、市町村長などの公職選挙に際して、候補者が選挙運動のために贈与を受けた財産については、公職選挙法の規定に基づく報告がなされているものに限り贈与税が非課税です。

社交上必要と認められる香典など

個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどための金品については、贈与者と受贈者の関係などに照らして社会通念上相当と認められるものに限り贈与税が非課税となります。
債務免除などを受けた人が、資力がない場合

無償またはいちじるしく低い対価で借金の免除や肩代わりを受けた場合は、みなし贈与として贈与税がかかるのが原則ですが、資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合には、その困難な部分について贈与税が非課税となります(相続税法8条)

離婚による財産分与の場合

離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税は非課税になります。
ただし、以下のケースは贈与税が課税されます(相続税基本通達9-8)。
・諸事情を考慮しても多すぎる場合、その多すぎる部分。
・離婚が相続税や贈与税を免れるために行われれた場合、全額。

被相続人から、亡くなった年に贈与を受けた財産

贈与税ではなく、相続税の課税対象となります。
ただし、この場合でも贈与税の配偶者控除を受けた財産は、相続財産に加算せずに贈与税の対象とすることができます。

作成:埼玉県八潮市三郷市の司法書士法人ひびき

004 贈与税とは、どんな税金?

個人から個人が、年間110万円の基礎控除額を超える財産をもらったときに、財産をもらった人は国に贈与税を納める義務があります。年間110万円を超える財産をもらった人は、贈与税の申告をしなければなりません。

たとえば、親が子に自動車をタダであげたり、男性が女性に貴金属をプレゼントした場合、これらは民法上の贈与契約にあたり、あげた人を『贈与者』、もらった人を『受贈者』といいます。

そして、贈与された物の価額が1年間で110万円を超える場合には、贈与税の申告をする義務があります。
贈与税は原則として、贈与で受け取ったすべての財産にかかります。対象となるのは、現金・不動産・有価証券・貸付金など現金に換算できるものすべてです。

 

【注意】

(1)当事者間で「あげます」「もらいます」という合意がなければ贈与にならない

たとえば、子供のために、内緒で子供名義の預金をしていても、それは贈与にならず、子供から名義を借りているだけの自分の預金です(『名義預金』といいます)

 

(2)1月1日から12月31日までの1年間でもらったものすべての金額を合計して、110万円を超えれば贈与税を申告

たとえば、Aさんが、父親から、3月1日に100万円、9月15日に100万円をもらったならば、年間で110万円を超えるので贈与税の申告をしなければなりません。

また、Aさんが、ある年に父親から100万円を、同じ年に母親から100万円をもらった場合、二人からもらった金額の合計が110万を超えるため、贈与税の申告が必要です。

 

(3)贈与者・受贈者ともに贈与と認識していなくても、贈与税がかかる場合がある

当事者が贈与ではないと考えていても、次のような場合には実質的に贈与であるとみなされ、贈与税の課税対象になります(みなし贈与)。
(例)
・有償だが、時価よりもいちじるしく低い金額で、財産を譲り受けた場合
・債務の免除を受けた場合
・生命保険や損害保険で、他人が保険料を負担していた場合に、保険金を受け取った場合
(ただし、相続人が死亡保険金を受け取った場合はみなし相続税として相続税の対象)
・個人年金保険などの定期金について、他人が掛金を負担していた場合に、年金を受け取った場合
(夫が妻の個人年金保険の掛金を負担し、妻が年金を受け取った場合など)

 

(4)反対に、贈与であっても課税されない財産がある

社会通念から見て贈与税を課すのが適当でない場合には、贈与税が課税されません(贈与税の非課税財産)。

 

(5)贈与税が課されるのは個人から個人への贈与

『個人から会社』への贈与の場合は法人税、『会社から個人への贈与』の場合は、所得税がかかります。

 

贈与税の申告と納付

申告する人:財産をもらった人(受贈者)
申告期限:贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日
納税期限:申告期限と同じ
申告場所:受贈者の住所地を管轄する税務署(※)
提出書類:贈与税の申告書
※八潮市の方が、三郷市に有する土地を、千葉県柏市に住む息子に贈与した場合、贈与税の申告は柏税務署で行います。
贈与税申告義務者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

贈与税がかかるのはどうして?

それでは、贈与税がかかるは、どうしてなのでしょうか。
結論から言えば、「相続税を逃れることを防ぐため」です。

亡くなった人の財産を受け継ぐときには『相続税』がかかります。
あるていど資産がある方が亡くなった場合には、その資産に応じて税金を課す仕組みになっています。

もしも『相続税』の仕組みだけがあって『贈与税』の仕組みがなければ、生前にすべての財産を誰かにあげてしまえば、税金をまったく払わずに済んでしまいます。これでは相続税という仕組みを作った意味がありません。

そこで、相続税の仕組みを逃れることを防ぐために、贈与税という仕組みが設けられているのです。
そのため、贈与税に関してはは『相続税法』という法律の中に定めがあり、『贈与税法』という法律は存在しません。

贈与税が相続税逃れに利用されることがないように、贈与税の税率は相続税の税率よりもずっと高く決められています。

作成:埼玉県八潮三郷の司法書士法人ひびき